シャーロック・ホームズの冒険 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2010年2月24日発売)
3.91
  • (74)
  • (109)
  • (70)
  • (12)
  • (1)
本棚登録 : 1331
感想 : 86
4

子どもの頃に読んだホームズを新訳で再読!1冊に12もの事件が収められた短編集。40ページほどの作品なのにスリリングでテンポが良く、ボリュームもすごい。ホームズの推理は魔法みたいでワクワクする。読みながら推理を入れる隙がないほど鮮やかに真相へと近づくスピード感。それでいてどの事件も個性的で、ホームズたちの冒険に立ち会ってるようなドキドキ感が楽しい。

話の筋を覚えていたのは『まだらのひも』くらいで、ほぼまっさらな状態で読めて新鮮だった。あのトリックは忘れられないインパクトがある。しかも密室とダイイングメッセージというミステリの定番を19世紀後半で織り込んであるのも面白い。
一番好きだったのは『赤毛連盟』。赤毛の人を対象においしい仕事を斡旋してくれたはずが、とんでもない犯罪へと結びついているという落差とユーモアがいいよね。「赤毛連盟は解散します。」の文言がシュールで笑ってしまう。

『ボヘミア王のスキャンダル』でのアイリーン・アドラーの見事な立ち回りも見惚れる。
『花婿の正体』は真相と幻想をたゆたう人間模様が興味深い。
『ボスコム谷の惨劇』の丁寧に証拠を積み上げて解決していき、子どもたちのもとから過去を拭い去る結末が見事。
『五つのオレンジの種』はなんとも意味深な種が絡む事件にハラハラ。最後は皮肉なラストでほろ苦い味わい。
『唇のねじれた男』もホームズの変装が活きた話で楽しい。
『青いガーネット』はガチョウが巻き起こす波乱がユニークで好き。
『技師の親指』の告白はスリル満載でよかった。ぼくだったら絶対に受けないな(笑)
『独身の貴族』は思いもよらぬ展開で驚いた。サイモン卿にとっては災難…。
『エメラルドの宝冠』は宝冠という目を惹くアイテムの裏で繰り広げられる人間関係の機微がいい。
『ぶな屋敷』の不可解な仕事の謎から始まる奇妙な冒険にドキドキした。

あと、このホームズの言葉が好き。まさにこの哲学が活きた作品たちだと思う。
「不思議な現象や異常な出来事を求めるなら、実際にそこらにある人生を見なければならない。人生というのは、いかなる想像力も及ばないほど衝撃的なものだ、と」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年6月1日
読了日 : 2021年6月1日
本棚登録日 : 2021年6月1日

みんなの感想をみる

ツイートする