十角館の殺人(5) (アフタヌーンKC)

  • 講談社 (2022年5月23日発売)
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本棚登録 : 242
感想 : 20
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コミカライズ版の『十角館の殺人』最終巻!ネタバレなしではさすがに語れないので、原作既読者が内容に少し触れつつ感想を書かせていただきます。

まず何よりも、あの衝撃シーンがどうなるか!1巻から楽しみにしていた描写ですよ!ついにこの景色まで来たかと。強い海風によって髪が崩れるという演出は上手いよね。本作における最大のトリックのためのデザインを、ここで種明かしにまで応用するという発想はなかった。記憶を消して読みたいワンシーンに仕上がっている。

そこからのエラリイの活躍!原作を知っている人が再びドキドキさせられる展開へ!原作だと不発だったエラリイ探偵がここで息を吹き返したのはうれしい!そのやり取りを警察への語りの中で回想するのも緊張感が加わってよかった。エラリイに推理させたことで、さらなるドラマへの呼び水にもなっている。

絵がつくからこそ際立つ殺人描写の苛烈さ。復讐のためにと言いつつも、犯人自身を蝕む葛藤と行動の残虐さが痛々しくも伝わってくる。しかし、それすらも新たな伏線として海のように飲み込んでいく。

江南の女性キャラ化はマンガに華を添えただけではなく、抱え込むには大きすぎる罪へと手向けた花のようだった。隙を生じぬ二段構え。千織が死んだ理由の違いがここまでドラマを膨らませてくれるとは思わなかった。原作のラストを活かしつつ、キャラの深掘りと役割を持たせ、よりエモーショナルな作品へと生まれ変わっていると思う。まさにマンガでしか味わえない味があった。

『十角館の殺人』を漫画化という厳しすぎる制約の中で、その縛りを逆手に取って罠にかけてくるとは。孤島という発想の枠組みを、原作と同じようにもう一回壊してくれた作品。清原先生にはお礼を言っても言い切れない。このまま館シリーズコミカライズしてほしい!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2022年5月25日
読了日 : 2022年5月25日
本棚登録日 : 2022年5月25日

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