舞台は戦後ロンドン。戦時中にスパイのスキルを得たアイリスと、人の内面を見抜く観察眼を持つ上流階級のグウェン。対照的な二人が始めた結婚相談所だったが、紹介者間で殺人事件が発生してしまい──。
会計士の青年トロワーは、服飾店店員ティリーを殺した容疑で逮捕されてしまう。しかし、彼が犯人だと思えないアイリスたちは、真犯人捜しに乗り出す!痛快なユーモアミステリかと思いきや、暗礁に乗り上げる事件に加え、アイリスたちの人生再起のドラマも絡み合う骨太なミステリに仕上がっている。
アイリスはスパイ活動で愛する人にも言えない秘密と罪を背負った。グウェンは愛する夫が戦死したショックで精神を患い、我が子の監護権を義両親に奪われてしまった。そんな傷を負った二人が冤罪を阻止したいという目的の中で、自身の運命とも立ち向かっていく姿が素敵だった。400ページ超えのボリュームながら、それに足るラストで気持ちよかった。続編もぜひ読みたい!
警察はトロワーを犯人だと決めつけてしまっている!しかも、殺人犯を紹介した結婚相談所という汚名まで着せられる逆境に!お互いのスキルを活かしながら、別人を装って潜入調査をしたり、表情を読み取って人間関係を構築したりと大活躍。徐々に大胆になっていくグウェンが見てて爽快だった。後半はめちゃくちゃタフなお母さんになってて痛快の一言。グウェンが亡き夫や大切な息子へ一途な愛情を注ぐ姿を見て、アイリスもまた過去を断ち切ろうとするのがよかった。
ウィットに富んだ会話劇が魅力的。ミステリだけじゃなく、サスペンス、スパイもの、さらには愛情がテーマのドラマが読みたい方はぜひ。
エル・コシマノ『サスペンス作家が人をうまく殺すには』が好きならハマりそう。
- 感想投稿日 : 2023年5月21日
- 読了日 : 2023年5月21日
- 本棚登録日 : 2023年5月21日
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