最近一番好きな作家、今村夏子さんの新作。
本屋で見かけてソッコーで購入、読了。
ううむ…今回はなかなかにムズいなぁ…
ちょっと各主人公が持ってる特殊能力がX-MEN過ぎて…(笑)
ざっくり言うと、物語自体に気持ちが深く入って行きにくかったです。
あくまでも日常を描いているというベースの中に、人間関係における気味の悪さとか、人間の悪意の怖さを織り交ぜる。
そういった書き方によって作り出す作品全体に漂う「不穏さ」が今村夏子さんの真骨頂だと思うのですが…
今回は特殊能力のせいで世界観がいささかぶっ飛んでいるもんで、そもそもイマイチ現実世界と感じることができず…
そこが気持ちが入っていけない要因になっているのかなと思いました。
あと、その特殊能力自体の気味悪さでちょっと不穏さが違うベクトルに向いてしまっているというか…そんな部分もあるのかなと。
個人的には、今までの「あひる」とか「星の子」の方が好きでした。
ただ、良くも悪くもやはり唯一無二の作品を描く作家さんだとは改めて思いました。
ので、引き続き追いかけて行きたいと思います( ̄∇ ̄)
以下、各作品について。
●木になった亜沙
タイトルにもなっている作品。
なぜか「自分の手からは誰も食べ物を食べてくれない」という特性を持った主人公の話。
いわゆるゴミ屋敷的なお話。
たしかに、立場によっては事実に対する受け取り方が違うってこともあるのかなと。
まあ、結局周りの住人にまで迷惑かけてたらそれはやり過ぎだろうという気はしますが…
ただの変人に見えても、本人的には筋が通った行動ってのもあるのかもしれない。
●的になった七未
なぜか「飛んでくる物が自分だけには当たらない」という特性を持った主人公の話。
報われない具合が残酷だなぁ…ひたすらに…
でも、人生の選択を間違うってそのくらいの破壊力があることなのかもしれないと、一方で納得しました。
そういった意味で、とてつもなくリアリストな作家さんだなとも思いました。
子供とは一緒にいるべきだったんだよな、きっと。
●ある夜の思い出
「腹這いになって生活している」という特性を持った主人公の話。
いや、もはやそれって特性なんだろうか(笑)
コレ、一番気持ち悪い作品ですね(笑)
かつ、一番良く分からない作品…
途中まで本当はネコの話…?と思ってたけど、やっぱり人間でした(笑)
「子供うむかなあ」のくだりでなんかゾッときましたけど…
でもコレって人間が動物に対して同じことをやってるなと。
擬人化したら、その気持ち悪さが際立ったって話かと。
帯に「三つの愛の物語」ってありましたけど、まあこれも愛のお話ではあるのかな…
いや、まあ、でも、なんというか…
それにしても気持ち悪い(笑)
<印象に残った言葉>
・それにミユキちゃんにとってはただのわりばしかもしれないけど、おれにとっては特別なわりばしだってことも、ひょっとしたらあるかもしれないだろ(P31、若者)
・いりません。(P120、七男)
・ねえ。子供うむかなあ(P142、子供)
<内容(「Amazon」より)>
生まれ変わったら甘い実をつけた木になりたい
誰かに食べさせたい。
願いがかなって杉の木に転生した亜沙は、
わりばしになって若者と出会う―。
奇妙で不穏で純粋な三つの愛の物語。
読んだあと、世界の色が違ってみえる。芥川賞作家の最新短編集。
- 感想投稿日 : 2020年7月13日
- 読了日 : 2020年7月13日
- 本棚登録日 : 2020年7月13日
みんなの感想をみる