猛スピードで母は (文春文庫 な 47-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (2005年2月10日発売)
3.53
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本棚登録 : 2174
感想 : 284
5

羽田圭介さんのYouTubeで紹介されていた本作。
ちょうど純文学気分だったこともあり、気になり購入、読了。

いやぁぁぁぁーー、ものスゴく良いーーー(´∀`)

出会えて良かった。
久々にどハマりしそうな作家さんに巡り会えた予感…( ̄∇ ̄)

何というか、とても「潔い」作品だなぁと。
変に飾り過ぎないストーリーと文章、これ見よがしなザ「純文学」とは対極にあるような感じ。

さらさらと、そして淡々と綴られていくこの作品の空気感がもう堪らなく最高です(*´∀`*)

何かこうホッカイロみたいな感じ?の作品ですね、地味なんだけど持ってると心もほんのり暖かい…みたいな。

ちょっとイマイチ(というか全然)作品の良さが説明し切れていない感じがありますが…
そもそも「小説」自体が「言葉で表現する文学」なので、その良さを「言葉で表現する」ことにも限界があるんじゃないかと…

ということで、気になったらぜひ直接本を…

あと、本作はキャラクターもとても魅力的です。

「猛スピードで母は」のお母さんとか、ハードボイルド具合が超絶カッコ良かったなぁと。
息子のためならベランダだってよじ登る(笑)

理想的過ぎない、写実主義的な作風の良さが出ているようにも思いました。

完璧過ぎる登場人物は誰一人出てこない。
短所も含めて表現されているからこそ、とてもリアルな実在する人物のように感じられるのではないかと。

あと、作品のタイトルもまた秀逸です…
「サイドカーに犬」、「猛スピードで母は」って、もうこの絶妙な透かし具合…(´∀`)

この出会いがあるから、読書は辞められない。

<印象に残った言葉>
・パックマンも苺たべるよ(P62、私)

・洋子さんにコーラを奢ってもらった自動販売機に、父にもらった偽造硬貨をいれてみた。とたんに警報ベルが夜の路上に鳴り響いた。夏休みの終わりを告げるベルだ。私は走って逃げた。(P74)

・慎は新しい担任の先生が嫌いではない。一人で頑張って大変なのはこの人だ。サッカーゴールを守り切れると信じて身構えている。(P115)

・しばらく二人は立っていた。須藤君は慎の横顔を何度かのぞきこんだ。「なんで泣いているの」須藤君はいつもより困った口調でいった。慎は上着の裾で顔をぬぐうと「これ預かってくれない」といって手塚治虫の本を手提げごと須藤君に渡した。(P157)

<内容(「BOOK」データベースより)>
「私、結婚するかもしれないから」「すごいね」。小六の慎は結婚をほのめかす母を冷静に見つめ、恋人らしき男とも適度にうまくやっていく。現実に立ち向う母を子供の皮膚感覚で描いた芥川賞受賞作と、大胆でかっこいい父の愛人・洋子さんとの共同生活を爽やかに綴った文学界新人賞受賞作「サイドカーに犬」を収録。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: レビュー有
感想投稿日 : 2021年9月21日
読了日 : 2021年9月21日
本棚登録日 : 2021年9月21日

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