機械との競争

  • 日経BP (2013年2月7日発売)
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日本人の労働者一人あたりの所得はこの15年で毎年下がり続け、100万円以上も下がっている。
その中で史上最長の好景気の期間が入っていることと矛盾している。
これは物まね工業の限界と少子高齢化による高度成長の行き詰まりという日本独自の事情によるものかと思ったが、どうも米国でも同様らしい。
GDPは増え続けているのに、所得に格差が大きくなって、中央値はむしろ下がっている、という。
本書ではその原因は、IT等による仕事の効率化に人間がついていけなくなっているため、と説く。
2000年までは、機械化がされて、人が余ってくると、その元になった技術で新分野が開拓され、それに余った人が労力として吸収されて、全体の生産(GDP)も増え、個人あたりの生産性も向上して所得も向上する、という循環だった。
それが、今世紀になってから、主にIT技術によって、例えば、一般小売りがAmazon.comに取って代わられる等で、小売業の余剰人員が他の新しい業種へ移行するのが間に合っていない。
僕がうすうすそうではないか、と思っていたことが、本書で裏を取って示された。
本書ではその対策として、やはり新規事業を立ち上げることを優先し、その支援を行政が行うべき、としている。また、スキル開発を進める組織改革と規制緩和が重要と行っている。
でも、僕はほんとうに、そんなことで、対応できるのか疑問を感じる。本書末の法政大学の教授の解説でも同様なことを述べていて、結局、抜本的な対策は不明、という印象を受けた。
数パーセントのほんの一握りの人が所得のほとんどを持って行ってしまうしまう格差社会は今後、世界的な大問題になっていくと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文化・文明論
感想投稿日 : 2013年11月26日
読了日 : 2013年11月26日
本棚登録日 : 2013年11月26日

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