痛い。闇い。黒い。読みながら何度思ったことか。
優越感・劣等感・嫉妬・羨望・憧憬・嫌悪・軽侮……隠しておきたい感情・見せたくないし見たくない感情ばかり綴られる。
『スペードの3』
某歌劇団出身のミュージカル女優つかさ様のファンクラブを仕切る美知代の物語。
子どもの頃から委員長タイプの彼女。感じていた優越感は「あのコ」の出現によって劣等感にすり替わり、焦燥と嫉妬に襲われる。昔も今も。
――いくら待っていても、革命は起きない。私から動かないと。
『ハートの2』
自分の容姿に劣等感を持つむつ美の物語。
容姿のせいで自分に自信がなく、小学校でも中学校でも軽んじられていた彼女の踏み出した小さな一歩は呼び名を変えるところから。
――誰かのためなんて言い訳せずとも、自分のためでいいのだ。私は、私のために、よりよくなりたい。
『ダイヤのエース』
美知代、むつ美のあこがれの存在である、つかさ様の物語。
舞踊学校の同期で女優の円(まどか)が引退するというニュースに、昔から彼女に抱いていた鬱屈した想いが頭の中でぐるぐる巡る。
――どうしていつもあの子だけ。私にはなんにもないのに。
朝井さん作品を読むのはまだ2作目。作風もわかっていないけど、前回も今回も「達者な文章と端正な構成」と思う。
それは、どんなに巧くてもツクリモノ=小説であることも実感させるけれど、勿体なさを感じるよりも、ほっとするのが正直なところ。
リアルを超えたリアル。
彼と同世代を描いた等身大の物語はその辺りどうなんだろう?ぜひ読んでみなければ。
- 感想投稿日 : 2014年5月2日
- 読了日 : 2014年4月29日
- 本棚登録日 : 2014年4月30日
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