――自ら体験した不可思議な話、求む。高額報酬進呈。ただし審査あり。
そんな新聞広告を見て、指定された店に出向く客たち。
そこは〈strawberry hill〉というイングリッシュパブ。
キレイにヒゲを整えたバーテンダーが奥の部屋に通してくれると、そこにいるのは奇談蒐集家を名乗る恵比寿という男と性別不明の美貌の助手、氷坂。
という、なんとも魅力的な設定の連作短編集。
わたしは連作短編集が好きなのだが、読後に長編感が強い連作短編集が「よくできた連作短編集」だと思っていた。
反対に「ただの短編集」としか思えない作品は「連作短編集を名乗るなよっ」と、ものによっては怒りの対象にすらなる。
そして、この作品はといえば。
長編感はない。
だからといって「ただの短編集」になっているわけでもない。
言葉のまま「よくできた連作短編集」なのだ。
約40ページ×7篇でサクサク読めるのに、連作短編集のキモともいえる最終篇がちゃんと役目を果たしている。
うーん。「よくできた連作短編集」のMy定義を変えねば。
不可思議な世界から話し手や恵比寿を現実に戻す氷坂。
一種の謎解きではあるのだけれど事後の解決策まで与えるわけではなく、放り出された格好の話し手たちが不憫になる。特に「水色の魔人」。
わたしはやっぱり優しいお話のほうが好きなので、ロマンチックで救いもある「不器用な魔術師」や幻想的な「金眼銀眼邪眼」が好き。
井上雅彦氏の解説まで読んで、太田忠司の氷坂に与えた役割の意図がわかる。
そしてミステリーランドの一冊「黄金蝶ひとり」が読みたくなり、積読山の一角で最近山開きしたミステリーランド山から引っ張り出してきた。
著者の俊介くんシリーズや新宿少年探偵団などのジュヴナイルっぽい作品が大好きなので、とても楽しみ♪
- 感想投稿日 : 2013年3月27日
- 読了日 : 2013年3月25日
- 本棚登録日 : 2013年3月26日
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