奇談蒐集家 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社 (2011年11月20日発売)
3.27
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本棚登録 : 1232
感想 : 139
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――自ら体験した不可思議な話、求む。高額報酬進呈。ただし審査あり。
そんな新聞広告を見て、指定された店に出向く客たち。
そこは〈strawberry hill〉というイングリッシュパブ。
キレイにヒゲを整えたバーテンダーが奥の部屋に通してくれると、そこにいるのは奇談蒐集家を名乗る恵比寿という男と性別不明の美貌の助手、氷坂。

という、なんとも魅力的な設定の連作短編集。

わたしは連作短編集が好きなのだが、読後に長編感が強い連作短編集が「よくできた連作短編集」だと思っていた。
反対に「ただの短編集」としか思えない作品は「連作短編集を名乗るなよっ」と、ものによっては怒りの対象にすらなる。

そして、この作品はといえば。
長編感はない。
だからといって「ただの短編集」になっているわけでもない。
言葉のまま「よくできた連作短編集」なのだ。
約40ページ×7篇でサクサク読めるのに、連作短編集のキモともいえる最終篇がちゃんと役目を果たしている。
うーん。「よくできた連作短編集」のMy定義を変えねば。

不可思議な世界から話し手や恵比寿を現実に戻す氷坂。
一種の謎解きではあるのだけれど事後の解決策まで与えるわけではなく、放り出された格好の話し手たちが不憫になる。特に「水色の魔人」。
わたしはやっぱり優しいお話のほうが好きなので、ロマンチックで救いもある「不器用な魔術師」や幻想的な「金眼銀眼邪眼」が好き。

井上雅彦氏の解説まで読んで、太田忠司の氷坂に与えた役割の意図がわかる。
そしてミステリーランドの一冊「黄金蝶ひとり」が読みたくなり、積読山の一角で最近山開きしたミステリーランド山から引っ張り出してきた。
著者の俊介くんシリーズや新宿少年探偵団などのジュヴナイルっぽい作品が大好きなので、とても楽しみ♪

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: あ行の作家(国内)
感想投稿日 : 2013年3月27日
読了日 : 2013年3月25日
本棚登録日 : 2013年3月26日

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コメント 2件

山本 あやさんのコメント
2013/03/28

九月猫さん、こんにちにゃー♪

ステキな山開き!!![笑]
またなんちゅうステキな本を見つけてくるんですかー。
また積読増えちゃうじゃないですかー![笑]

奇談蒐集家、性別不明の美貌の助手!
ものすごい勢いで惹かれる要素がっっ♡
創元推理文庫さんも惹かれる本の出版多いですよねー[*Ü*]

よくできた連作短編、積読の山に積みます!
山開きしたい山がまた……………[笑]

九月猫さんのコメント
2013/03/28

あやさん、こんばんにゃあ♪

そうなんですよー!
キーワードがね、いちいち魅力的なんですよー(*>ω<)o
「ミステリ」とか「幻想小説」とかを強く望んで読むと、
どちらにも中途半端なのですが(^-^;)
雰囲気とアイテムが好みのものだらけで、わたしは楽しめました♪
この方の「新宿少年探偵団」や「俊介くん」シリーズが
怪人が出てきたりとか、塔が動き出す仕掛けがあったりとか
ちょっと時代がかっていて好きなんです~(* ̄∇ ̄*)
そういうものがお好きなら、あやさんの積読山にもぜひ(笑)

積読山。
開いても開いても標高が変わらないという……魔の山ですな(笑)

創元推理文庫さん、翻訳モノも好みのものがとても多いです!
カバーが傷みやすいのが残念なんですよねぇ(涙)

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