みちくさ道中

著者 :
  • 平凡社 (2012年12月21日発売)
4.19
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本棚登録 : 164
感想 : 35
5

フォローさせていただいている方のレビューで、萩の月で大爆笑なさったという一文を読み、気になって仕方がなかった本書。
萩の月、大好き~♪しかしなぜに爆笑??

謎を解くべくいざ読まん、と勇んで開いた一ページ目。
ご本人の言葉にもあるように「やる気のない書き出し」で少々不安に。

ところが、めくった次のページ。
豪儀な将来の夢(目くらまし)にくすっと笑い、太宰治の当て台詞「俺がそんなに?井伏じゃなくて?」にぷははっと笑い。
続く妄想大全開には身に覚えがあるものの、笑いながらなんでやねんと突っ込む余裕がまだあったのに、「あげる」の不本意なイカで涙が出るほど大笑い!
やっと笑いが治まって目にした次の文が、件の「萩の月」。
いやー、まさかイカと萩の月がコンボとは・・・!
辿り着いた体育会系らしい結論も、もうなにがなんだかわかったようなわからんような、でまたまた大笑い。
・・・噴き出したコーヒー返してください。

「寂しさの考察」という稿をはじめ、いろんなところに何度も出てくる「寂しさ・孤独」「己の考えていることが誰にも伝わらない」という言葉。
見るだけではマイナスな印象を受けそうだけれど、けしてそういうふうに書かれているわけではない。
離れていても繋がっている、そういう存在があればひとりでいても寂しくない。
言葉はたやすく通じないけれど、発されなかった言葉もなにがしかの力を持ち、その人のたたずまいとなり周囲になにか伝えるのではないか。
落ち着いた目線で自分と周りを冷静に見つめている文章の底には、大切だと思っている人たちへの揺らがない信頼があるように思う。

“「孤独」がすなわち「寂しい」とは限らない。”
寂しがりやの孤独好きのわたしには共感できる言葉がたくさんあり、読んでよかった一冊。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: か行の作家(国内)
感想投稿日 : 2013年5月14日
読了日 : 2013年5月13日
本棚登録日 : 2013年5月14日

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コメント 6件

vilureefさんのコメント
2013/05/14

おお!お読みになったのですね。
萩の月の謎は解けたようでなによりです)( ´艸`*)
笑ってもらえてよかった~。
仕事中に忍者を妄想する木内さん、突然江戸っ子口調になる木内さん。
本当に愛すべきキャラですよね♪

寂しがりやの孤独好きですか~。
それって猫そのものじゃないですか!!
九月猫さんらしくていいです、ふふふ。

そう言えば、木内さんの作品他にも読むぞ~って意気込んできたのにまだでした・・・。
思い出してしまった(^_^;)


.

九月猫さんのコメント
2013/05/14

vilureefさん、こんばんは♪

いやあ、萩の月とイカのコンボには参りました。
「あげる」の使われ方、あまりにも軽すぎですよね(^-^;)
口に出すのが憚られる妄想は、身に覚えもあるところですが(ゲフンゲフン)
なぜに忍者?!しかも仕事中!!木内さんおもしろい~っ(* ̄∇ ̄*)

木内さんの、ユーモラスな部分もそうでない部分も
淡々として温度差の少ない文章と歯切れの良さがとても心地よかったです。
他の作品、わたしも読んでみたいなぁと思います。

vilureefさんの木内作品レビュー、とてもとても楽しみにしています♪
ステキな本と作家さんに出会わせてくださってありがとうございました!

円軌道の外さんのコメント
2013/05/14


こんばんは!
たくさんのお気に入りポチ
いつもありがとうございます(^O^)

すごく面白そうな本ですね。

九月猫さんの素晴らしいレビューに
いろんな想像をして
携帯見ながら
やたらとニヤついてしまいましたよ(汗)
↑アブナいアブナい

あと自分も
寂しがり屋の孤独好きです(笑)♪

「孤独」っていう言葉は
日本ではなぜか
後ろ向きなニュアンスがあるけど、
必ずしも孤独だから
不幸だというわけではないですよね。


この「孤独」の時間の楽しみを
知っているかどうかで、
ぐんと中身の濃い話ができるかどうかが決まってくるし、

人を憂いだり
人とコミュニケーションをとったりの、
『人間力』に
大きな影響があると自分は思ってます。


群れから抜け出して本を読むことも
結局は孤独を愛してるからだし、
読書って
自分と向き合うことの孤独をくれるものだと思うし。


自分もアラフォーになって
孤独と上手く付き合えることが
大人になることだって
最近は思えるようになりました(^_^)v


ということで
今日も一人
屋台で呑んでます(笑)

九月猫さんのコメント
2013/05/15

円軌道の外さん、こんばんは♪

こちらこそ、コメントとたくさんの「いいね」を
ありがとうございます!

屋台でお酒、いいですね~!
わたしも一人酒派ですが、寝オチするので家呑みオンリーです(笑)
屋台、行ったことないので憧れちゃいます♪

円軌道の外さんも「寂しがり屋の孤独好き」さんですか。
お仲間ですね(*´∇`*)
読書が好きな人はそういう傾向が強いのかも??

そうなんですよね、「孤独」だから不幸とも
限らないんですよね・・・。
「孤独」を覚えてはじめて、外との繋がりに気付く事もありますし。
どんなに仲良くて好きな人でも、始終一緒にいると息が詰まることもありますし。
独りのときって、自分に向き合って自分のことを考える時間でもありますし。
(自分のことを考える時間って大切だと思うんです)

そう考えると「孤独」って「贅沢」な時間でもあるのかもしれません。

とか、えらそうなこと言ってもわたしの場合、ただ単に
「本読んでるときは放っておいてよ」ということに過ぎませんが(汗)

円軌道の外さんのコメント
2013/05/29


屋台いいですよ(^O^)

最近はオシャレな屋台も多いし
焼き鳥やおでんやラーメンや
目の前でさばいてくれて
新鮮な刺身が食べられる居酒屋風なところもあるし、
女性だけのお客さんも沢山います。


風情のある店で呑む日本酒も美味いけど、
知らない人と風に吹かれて
壮大な宇宙の話なんてしながら呑む
お酒がまた格別なんですよ♪
(大人で良かったって思う瞬間です笑)


また、一杯やった帰り道の
上気した頬に当たる夜風が
今の季節は心地いいし(^^)

星や月を見上げながら
小さな声で
好きな歌を口ずさんで帰る家までの時間も
孤独だけど
贅沢だなってホンマ思います。


自分が好きな小説で
吉田篤弘の『空ばかり見ていた』という
連作短編集があるんですけど、

その中の一編に
「星はみな流れてしまった」というタイトルで
不思議な野良猫のホクトと
屋台を営む夫婦の話があるんです。

コレを読むと
いても立ってもいられなくなるくらい
無性に屋台に行きたくなりますよ(笑)

スゴくロマンチックな連作短編集なので
オススメです(^_^)v

九月猫さんのコメント
2013/05/30

円軌道の外さん♪

屋台、楽しそうですねぇ(* ̄∇ ̄*)
寝オチするので、お外飲みはとんとご無沙汰ですが、
ちょっとふらりと出かけてみたくなりました。
・・・でもうちの町、屋台ってどこにあるのかしら(^^;)
最近は流行りのバルばかりできてます。

「星はみな流れてしまった」
不思議な野良猫のホクト、気になります!
吉田篤弘さんの『空ばかり見ていた』に収録されているのですね。
(メモメモ φ(・ω・ ))
連作短編集は大好きなので、ぜひ読んでみたいと思います♪

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