空海

著者 :
  • 新潮社 (2015年9月30日発売)
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感想 : 37
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文学者司馬遼太郎の空海本も、空海の伝記を書いているようで、実は司馬空海論を展開していたのだが、文学者高村薫の空海本も、評伝のようでいて、実は「新リア王」と同じように、宗教と現代との関係を問うものだった。

阪神大震災以降、著者は宗教に近づいた。知識が邪魔しているのか、まだ何処かの宗教に帰依している様子は見られないが、その理解度は、私如きの浅知恵では及ばない深さまで行っているのは明らか。その深さから見えてくる「現代」が裏テーマである。

よって、この評伝が東日本大震災の被災地から始まり、元オウム真理教信者へのインタビュー、ハンセン病療養施設で終わるのは必然である。特に空海とオウム信者との違いに言及して、その隔たりが、幾つかの決定的な点はあるものの、大きく離れていないことを書いていたのは重要である。

宗教とテロは、いつかこの作家のメインテーマになりそうな気がする。

2015年9月の刊行であるが、読了が今頃になってしまった。図書館に予約して、順番がくるまでナント1年近くかかったからである。とまれ、知識人高村薫に対する根強い人気は、衰えていないということだろう。(因みに、このように書いてAmazonやブクログの書評サイトに載せると、時々ネットから図書館利用のことを書くと本を売る邪魔をするので書かない方がいいですよ、と親切まがいの「助言」を頂くことがある。私はそういう助言は日本人の「根深い業」であり、「罪」だし、やめるべきだと思っている。もし書評サイトから警告が来たならば、私はそれに従う用意がある。しかし一度もそんなものは来たことがない。第三者がいかにも当事者のことを「忖度」しているかのようにして匿名で意見してくる。生活保護受給者を役人の代わりに意見したりするのと同じで、貴方の意見は当事者には迷惑でしかなし、ひいては日本をダメにしている、と言いたい。Amazonならば、本書に関係ないことをダラダラ書くと、そのことで掲載不可になりそうなので、付け足しておくと、本書は、空海評伝を書いているようで、裏のテーマは、実は宗教と日本人の土着精神との関係である。よって、私の「忖度」批判は本書と決して無関係ではないと信じている)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: か行 ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年2月16日
読了日 : 2017年2月16日
本棚登録日 : 2017年2月16日

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