AKB48の戦略! 秋元康の仕事術 (田原総一朗責任編集)

  • アスコム (2013年1月25日発売)
3.60
  • (17)
  • (34)
  • (32)
  • (5)
  • (4)
本棚登録 : 299
感想 : 38
4

にわかAKBファンと言っても、田原総一郎はやはり小林よしのりとは違い、「いかにAKB現象を大人の商売に活かすか」という発想から離れられない。まあ、だからこそ一般の人にもわかりやすいAKB論並びに秋元康論になっていたと思う。

目次を少しだけ見ても、
●企画の原点は「根拠のない自信」。根拠を求めるから
みんな同じところへ行ってしまう
●ネット時代の「口コミ」は、作り手の予想以上に急速に拡大する
●「共犯意識」がドミノ倒しのように広がるとき、ヒットが生まれる
●雑談の中にこそ、企画のヒントがある
●左右アンバランスのブラウス丈にも意味がある
●リーダーシップとは天性のものではなく、環境が作るもの
●成功する人は、成功しない理由を見つけない
●「戦略がない」のが戦略
●「秋元康、今日をもってAKBを卒業します! 」と言うときがくる

等々と、ビジネスノウハウがいろいろあって面白い。以下、私なりに「ハッ」としたところを書き写したい。

●オーディションで完成した娘はとらない。一つだけいいところがあればいい。必ず変わってどんどん良くなっていく。やっぱり見られることが、彼女たちには何よりのエネルギーなんです。
●AKB劇場は予想よりもはるかに早く満員になった。
→これは私には意外。250人の満員に四ヶ月かかっているが、1-2年の雌伏のときを考えていたらしい。その四ヶ月で第一期生は本気で辞めることを考えていたのに。反対に言えば、必ず当たるという自信が秋元康にはあった。これは彼の凄い処。
●チャンスは順番に回ってくる。ベランダに置いた鉢植えの様に、光の当たり方は時間や季節によって違う。順番があるんだと。(略)メンバーに「歌も芝居も何でもできる人になりたいですっていうのは無理だ。一つに絞り込め。自分のなかに、これだけはという武器を見つけなさい」と言っています。僕は研究生含めてAKB全員の名前を覚えていますけど、覚えた順番は、たぶん「この子はこんな努力を始めたのか」と気づいた順番なんですよ。
●「認知」と「人気」は違うと。テレビは何千万もの人ににさせることができるけど、それは「あ、知ってる」というだけのこと。「この人のためなら行列してもいい」とか「どこそこに出かけてこの人に会いたい」というのが人気で、そこまで刺さらなければ、ダメなんだと。
●400-500曲を聞いて1曲に絞って作詞する。
●企画書は書かない。奇を衒うのもしない。それも「裏なんだ」と予定調和になるから。何も制限をかけない。どんな提案でも、先入観を持たずに「いいんじゃないの」と考える。それをどこまで出来るかなんです。
●どんな仕事でも企画はある。仕事がたくさんくる人は必ず何かを考えています。
●大衆は、ある分野で1人のスターを作って、それで飽きてしまう。AKB48ブームが去っても、ポストAKBはなかなか生まれにくい。きっと、僕たちが予想もしなかったところからブームが起こりますよ。
●やっぱり人は、初めてのことが1番エキサイティングなんだ。
●でも、ドーム公演が終わって黄色いビルのふもとの橋を渡って帰る人が「あっちゃんとたかみなの歌が良かった」とか「指原のMC、おもしろいじゃん」という具体的なものが、やっぱり必要です。興奮冷めやらぬ状態で出て来て「いやあ、おもしろかった。」と思っても、冷静になってくると「さて、何が面白かったんだっけ?」というのでは、リピートを生まないんですよ。
●僕はリーダーシップを高橋みなみから教えられました。リーダーシップとは天性のものではなく、環境がつくるものだと。
●AKBに嫌がらせとかは最初はあったかもしれないけど、今はない。みんなで目標に向かって悪戦苦闘していたら、隣の子をいじめているヒマなんかないんです。
●テレビ露出を減らす選択もあるのだろうけど、それはしていない。このまま全力でメディアに露出し続けていたら、大衆はいつ飽きるんだろう、どこからAKBのほころびが始まるんだろうということを、実験しているようなものです。

また、高橋みなみのインタビューもあって、彼女の以下のような「リーダーシップとしての認識」も素晴らしかった。
●キャプテンは、歌もダンスもみんなより一生懸命やらなくちゃいけない。それプラス「できすぎてもよくない」完璧すぎる人間には、やっぱり誰もついていきたくない。
●(リーダーとしてやってはいけないのは)「わからない」って言っちゃダメだな、と思っています。例えば、今日は何をやるのとか、この曲の次は何なのというとき。そういうときは必ず「ちょっと待ってもらっていい」と言って、私が聞きにいき、みんなに答えを教えるようにしています。

若干21歳がこの真髄を分かっている。いかにAKBとして鍛えられたのか‥‥。凄い。

私自身は「AKBという現象」を「日本の世直し」に活かせないかな、と考えている。少なくとも、「若い世代の大衆はこの様に動く」ということの見本がここにある。

●ネットの口コミというのは、数ヶ月から一年で「すべてを覆す」ほどの力がある。

●何か一つ、徹底的に訴える何かで輝くことが必要。後は「ファンが育ててくれる」

●幅広く自由な発想で、企画を考える。大きくなればなるほど、簡単に「人は酔う」。しかし、リピーターをつくるためには、「確実な何か」が必要である。認知と人気は違うのである。

等々。
2013年7月3日読了

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: あ行 ノンフィクション
感想投稿日 : 2013年7月28日
読了日 : 2013年7月28日
本棚登録日 : 2013年7月28日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする