ルービン回顧録

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2005年7月1日発売)
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 いま、あなたの目の前に憧れの人がいるとしよう。その人が好きで好きでたまらない。でも、実際のところ、あなたがその人に何のアプローチもしないとしても、世界に対しては何の影響もない。もしかしたら、あなたたちの子供が救世主になるかもしれないが、実現しない未来には誰もケチをつけない。しかし、たとえ実現しなくてもケチをつけられてしまう人達がいる。だが、決断しなければならない。それが政治家だ。

 ロバート・E・ルービン。第70代アメリカ合衆国財務長官。この本の著者だ。彼曰く、彼の思想の根底にあるのは蓋然的思考。すなわち、世の中に確実なことなど何もないのだから、どんな起こりえないと思える事態も起こりうる。そんな思想の元にアメリカ経済を牽引してきた男。

 なぜ彼がそんな思想に支配されたのか。この本を読めばその一端が理解できることだろう。アメリカの投資銀行ゴールドマン・サックスで裁定取引に従事し、市場ではどんな事態でも起こりうると言うことをその身に刻んできたのだから。

 お金を儲けたいだけならば、別に政治家になどなる必要がない。彼の根底には、政治への熱望が潜んでいたのだろう。この本には、クリントン前大統領への深い敬意とともに、自らが実施してきた経済政策の裏面が率直に記されている。まさに、生きた経済の教科書。
 また、政治の世界の恐ろしさも垣間見ることができる。たとえ自分が信じていなくても、政敵を追い落とすためならばどんなことでも利用するえげつなさ。自分の正義を貫くためには道を選ばない。

 結局、経済政策は結果のみによって評価されるもので、どんな高尚な理論もそれだけでは何の役にも立たないのだということが分かると思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 政治
感想投稿日 : 2012年1月28日
読了日 : -
本棚登録日 : 2012年1月28日

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