銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎

  • 草思社 (2000年10月2日発売)
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ようやく下巻読み終わりました。
上巻は家畜を飼うことによって感染症が多く発生し、その感染症の耐性を持つヨーロッパ人(スペイン人)が南北アメリカのインカ、アステカ帝国に渡ったとき、多くの現地人が感染症で命を落としたところまで書いて終わっていました。

下巻は文字が生まれた地域とそうでない地域の話しから始まります。そもそも文字が必要にならなかった地域。つまりは狩猟採集で暮らしている人が住む地域では文字は必要にならなかったので、文字は生まれなかった。農耕が早くにいきわたった地域では人口が増え、上下の差が生まれ、人々を支配する階級が出てくると支配するルールを広く浸透させるために文字が必要になり、文字が生まれてきた。メソポタミアのシュメール人、エジプト人、メキシコの先住民が作り出した文字は独自に作り出されたものとされている。

という話しから始まって、その後地球上の大きな大陸(ユーラシア、アフリカ、アメリカ、オーストラリア)ごとに発展の違いがどこから生まれたか、についての考察が進む。

結論としては、第二次大戦下のナチスドイツのような人種による優劣というのはみとめられず、ただただその地域の環境によるものだ、というのが著者の考え。

環境といっているのは、まず栽培化できる作物がそもそもあったかどうか。もちろんその地域の気候にも左右される。それから、家畜にできる動物がいたかどうか。南北アメリカには家畜にできるような動物がほとんどいなかったため、先住民(インディアン)はヨーロッパから来た人たちに侵略されてしまったという。インディアンは、馬に乗って雄々しく戦っているイメージだが、もともとは馬を家畜として飼ってはおらず、ヨーロッパから馬が入ってきてから、それを使いこなすようになったとのこと。栽培化できる作物があって、家畜がいるってことは農業しながら豊富な栄養素をとることができたということ。そうすると、狩猟採集していた時代より人口が増える。人口が増えるとやがて集団を形成する。形成した集団が大きくなるとやがて国家を形成する。国家ほどの大きさになると多くの人民を使って灌漑を作ったりすることができ、より発展する。そして文字も浸透し、さらに発展する。

発展した技術は人が移動することによって伝播する。アフリカ大陸や南北アメリカ大陸は南北に長い。しかも途中で行く手を阻む障壁がある。アフリカ大陸は中央部にいたツェツェバエがそれより南に行くことを阻み、アメリカ大陸はそもそも地形的に中央できゅっとすぼんでいて南に行けない。でも、ユーラシア大陸は東西に長くいく手を阻むものが少ないため、農業やその他の技術が伝播してそこここの地域が発展した。

そうして一足早く発展した地域の人たちが、その時点で遅れを取った地域を侵略し、またたくまに原住民を駆逐してしまった。結局は環境の差なんだ、と。駆逐された地域には「銃」も「病原菌」も「鉄」も無かったんです。

家畜がいることで感染症の耐性が遺伝子に書き込まれたってのには驚かされました。でも、確かにそうかも。ユヴァル・ノア・ハラリからジャレド・ダイヤモンドにやってきましたが、とっても興味深く読めました。訳も読みやすかったと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ライフ
感想投稿日 : 2020年11月29日
読了日 : 2020年11月29日
本棚登録日 : 2020年11月29日

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