耳をすませば (集英社文庫(コミック版))

著者 :
  • 集英社 (2005年7月15日発売)
3.84
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本棚登録 : 473
感想 : 69
5

非常に面白かった。
映画が好きなので、一応原作も読んでみるか、と思い、手にとって見た。正直、少女漫画ということで、全然期待していなかったのだが、読み終わった直後の感想は「少女漫画」ってこんなに面白いのか!?だった。
特に「幸せな時間」の方はファンタジーテイストで短編的にさくっと読める面白さだった。
本編の方は映画と対比しながら読んだが、案外映画でもシーンを踏襲している箇所が多いということが驚きだった。また、漫画の方は(雑誌社からの要望だったらしいが)恋愛が話のベースとなっている一方、映画の方は夢や人生等にもフォーカスしている点が大きく違うところだと思うが、それは巻末の近藤監督と柊さんの対談を読んで納得した。柊さん曰く:

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「次の作品[本作]は恋愛だけでは終わらない、もっと広がりのある世界といいますか、好きだ、嫌いだに終始するのではなくて、生きて行くには恋愛以外にも大事なことがたくさんあるわけですから、異性との関係も、人間的な深いつながりとして描けたらいいなって思った」
「私が描いた作品というのが、そもそも自分の描きたいことを描ききれないうちに終えてしまった作品だった(略)宮崎さんの絵コンテを読ませて頂いた時、私の中で未消化で終わっていた部分、私が原作で描きたいと思っていたことがほとんど全て入っていて、やっとこの作品がきちんとした形で結末を迎えることができた」
「描き始めた時は長く続けるつもりで、いろいろ伏線をはっていたんですが、途中で終わりにしなくてはならなくなって、描いた伏線をとにかく整理して終わらせるのにとても苦労しました」
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もともと原作が恋愛だけに留まらない、人生や人間関係の悩み等もスコープにしていた作品だったからこそ、映画とのつながりも違和感無く読めたのだと思う。
また、正直1話、2話は非常に面白かったのだが、3話、4話でいきなり恋愛ムードが強く出てきてしまって少し冷めてしまった。それも、上記を読んで納得できた。柊さんの希望どおり、長期連載になっていたら…と思わずにはいられない。
また、映画の方で描かれていた「おじいさんとバロンと雫の関係」についても、原作でもやはり同様に描かれる予定だったというのも上記を読んで理解できた。(第1話でそれっぽい描写があるのだが、先述のように後半はほとんど恋愛劇になってしまっていたので、そのあたりの描写があまり無かった)
あと少し気になった点として雫のキャラクターが原作はかなり明るい目の子として描かれている(著者のあとがきもかなり明るい感じなので著者の性格が反映されているんだろうか)一方、映画では少し悩みや憂いのあるキャラクターとなっているのも興味深かった。映画ではやはり、あのキャラクターの方が魅力的だと思った(年齢の設定差の影響もあるだろうが。漫画は中1だが、映画は中3)。
最後に柊さんの結婚に関するエピソードがなかなかドラマチックで素敵だったので、メモ:
「最初にあるお店で[バロンの人形を]見つけた時、ちょと値段が高かったんで買わずに帰ってきたんです。でもやっぱり欲しくなって、何週間か後に買いに行ったら、もう売れてしまっていて、諦めたんです。ところがその人形を買ったのは今の旦那で、誕生日のプレゼントに私にくれたんです。」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2019年2月4日
読了日 : 2019年2月4日
本棚登録日 : 2019年2月4日

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