もうひとつのドア (ディアプラス文庫)

著者 :
  • 新書館 (2001年12月7日発売)
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本棚登録 : 305
感想 : 30
4

粗野な建築家と生い立ちに難ありな受け。

基本的にマイナス思考の強い受けは嫌いじゃないけど、強すぎると辟易。
でもそれはただ悲劇のヒロインぶってたらであって、この作品の受けはちよっと違う。
心の軋み方がリアル。
本当に辛かったり苦しい思いをしたことがある人ならわかると思う。
人に近づく怖さ、術の知らなさ、自分に価値を見出せない思考に追い込まれた生い立ちはどう足掻いても幼少期に自分でどうにかできるものではなく、母親の自殺が愛されることへの断絶にも思えたんだろうな。
そうなると、すべてが壊れ物で手にできないと、自分に与えられるものは手を伸ばしてはいけないと、手を伸ばせないものは見たくない、見なければ知らないままでいいって。
無遠慮な優しさはナイフのように鋭く人を傷つける。
誰もが親切や愛情を素直に受け取れるわけではない。
受けは愛されることを怖く思い、逃げるけど。
それを忘れるくらい心配したり自分の感情が走ることを覚えていく姿に最後は涙しました。
攻めの無骨というか粗野さが、いつ受けを?それは愛情?娘と同じ?と少しはっきりしないけど、受け目線なのでそこは読み手次第かな。
隣の柳瀬が意外だったこと、パン屋のおばさんの優しさ。
まだ17歳なら、視野が広がることで世界が変わることがいくらでもある。
それに気づかせてくれる人に出会えて本当に良かった。
娘さんも可愛かったし、三人で箸置き使う幸せしっかり掴んで欲しいです。
なんだか、浄化されました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: BL小 作者名:た
感想投稿日 : 2014年10月7日
読了日 : 2014年10月7日
本棚登録日 : 2014年10月5日

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