名画は語る

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  • キノブックス (2015年1月31日発売)
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 日本近代アートの巨匠千住博が、ミケランジェロ、ミロや自分も大好きなターナーの絵を語る。
 フェルメールのミルクを注ぐ女は、実は秘密のサインを送っている。すごく官能的な絵なんだ。ダリはフェルメールを崇拝していて、この世が終わるなら、何を持っていくかという問いにフェルメールの作品をあげるほど。レオナルドダビンチの最後の晩餐は、皆こちらを向いていることから劇の描写であると。不自然な点が多いのは、謎掛けに違いない。ピカソのゲルニカは、作品の左下に本人が出ているが、実は作品を描いている最中に愛人2人がハチ合わせるという事故があり、挟まれたピカソがボロボロになっている図とも言われているとか。1937年のドイツ軍によるスペインのゲルニカ空爆を描いた作品なのに、不思議とワクワクしながら描いたのではないか。ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」は、ドラクロワ本人がシルクハットをかぶって出て来ている。等々。
 赤と黒ほど違う色も、お互い歩み寄れば必ず美しいハーモニーを奏でることができる。絵を描くこと、音楽を奏でること、調和がもたらす幸福感は総じて一音一色よりも多音多色の方がより豊かな味わいに至るということ。千住氏は、画家は何の為に絵を描くのか?という問いに対して、「衝動」という言葉で表現している。全ての欲求を封じて、絵に向かうくらいの力がある。そして、素晴らしい絵とは見た人に生きる力を与えるものだと。
 よい絵を沢山見て、感じて、豊かに生きていきたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アート
感想投稿日 : 2015年5月17日
読了日 : 2015年5月17日
本棚登録日 : 2015年5月17日

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