ごほうびおひとり鮨 1 (ヤングジャンプコミックス)

著者 :
  • 集英社 (2017年3月17日発売)
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本棚登録 : 114
感想 : 6
5

いきなりのぶっちゃけ失礼
さすがに、鮨をテーマにした食漫画って意味じゃ、『すしいち!』に一歩及ばないかな。ま、そもそも、ジャンルが違うので、どっちも面白い、そこが大事
『すしいち!』は、小川先生が元々、週刊少年マガジンで活躍していた猛者だけあって、そのストーリーは少年でも十分に楽しめるモノ。逆に、こっちの『ごほうびおひとり鮨』は、若い人向けじゃないかな、と感じた。それこそ、主役の伊崎藍子や私のような三十歳前後の漫画読み向きだろう
まぁ、二十代の漫画読みが読んでも、存分に楽しめるだろうし、また、自分も
こんな風に鮨を味わえる三十代になりたい、と目標も持てるだろう
あくまで、私個人の印象だが、この作品は鮨を食べるっつーより、楽しみ方を伝授する、そんな感じの態である
今んとこ、私は質より量。回る寿司だと、30前後は食べないと満腹感が得られない。しかし、今後も、この食欲を維持できるとも限らない。そんな時こそ、満を持して、回らない鮨屋に挑戦したい、そう思っていただけに、この作品はストライクだった
一人カラオケ、一人映画鑑賞、一人焼肉などは、さほど抵抗のないチャレンジだけど、一人鮨ってのは尻込みしてしまう。回転寿司であれば、そこでもないが、カウンターの鮨屋となると、自分はこの店に相応しい品格を備えているのか、相応しくないと判断されたら叩き出されるんじゃ、そんな被害妄想を持ってしまっているのは私だけじゃあるまい
この漫画は、その手のネガティブ発想を取り除いてくれる。それは、作者の分身たる伊崎藍子が、失恋のイライラ、ムカムカ、ストレスを吹き飛ばすべく、名店巡りを重ねて、真の美味を知り、人間としても成長しているからだろう
彼女のリアクションも、大袈裟っつーか嘘臭くなく、漫画的なリアルがあるので、味による感動の衝撃が想像しやすい。もっとも、実際に食べたら、そんな想像、呆気なく引っ繰り返るんだろうが
言い方こそアレだが、彼女でも入れるなら私も行けるって気にさせてくれるのだ
また、王嶋先生が、ちゃんと取材して、自分の五感で鮨を味わっているのも影響力が大きい。自身の感動を漫画に活かせるか、それも漫画家の腕の見せ所であり、王嶋先生はイイ体験をしている
そもそも、鮨は江戸時代に生まれた庶民派の食事、いわば、古来からあるファストフードだ。変に緊張する必要はない・・・・・・そんな事を言えるのは、育ちのいい人間だけだ
一般家庭の人間にとっちゃ、日本人の感性により、最早、芸術の域にまで達している鮨の圧はとんでもない。しかし、それだけに、ひとり鮨をクリアできたら、大人の仲間入りって気もする
今後、伊崎藍子が、どんな名店で名鮨に舌鼓を打ち、その感動を私らに伝えてくれるのか、楽しみだ。また、スシオタな子安さんとの距離感も(笑)
どの回も、それこそ、涎が5ℓじゃ済まなくなるものばかり。一話を前編、後編に分けてるのはテクニックを感じる。必要ないって人もいるかもしれないけど、この上手い引きが大事なのだ、漫画にしても、コース料理にしても。そんな中で、個人的に一番、行ってみたくなったのは、三・四喜目「幸鮓」だった。シャコを子持ちと子なし、アジを腹と背、など食べ比べさせてくれるのは興味がある。また、私は稲荷寿司に次いで、煮ハマグリが好きなのだ。食べてみたいなぁ、舌が甘やかされる煮ハマグリ!!
この台詞を引用に選んだのは、わかるなぁ、と思ってしまったので。美味しいモノは、ほんと、人をちょっと変にしちゃうのだ。むしろ、変になれないってのは、美味しさが突き抜けてないってコトか?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: コミック(集英社)
感想投稿日 : 2017年6月7日
読了日 : 2017年5月10日
本棚登録日 : 2017年3月17日

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