ありごけ 1 (ビッグコミックス)

著者 :
  • 小学館 (2016年1月12日発売)
4.40
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本棚登録 : 18
感想 : 2
5

剥き出しだ
伝わる、伝わらない、は関係なく、それが私の『ありごけ』って作品に対して感じた、端的な印象
ありごけ(この単語も、私は初耳だった)のヒロインが記憶喪失って設定を背負っているからか、個人っつーよりかは、人間って生き物の本性が、読み手の許容量を考えないレベルで曝け出されているな、と感じた
肉体的や精神的にエグい描写が多い訳ではない・・・皆無でもないが
巧く言えないが、ヒロインと関わり合う依頼人らに近しいトコが胸の中にある読み手は、確実にハッとさせられ、思わず、本を閉じてしまうかも知れない
ある日から前の記憶をすっぱりと失い、思い出せない事が多くなり、自分って存在が自分で最も判らなくなるからこそ、却って、大事な人間のコトが理解でき、問題とゴチャゴチャ考えずに向き合えて、最適の解を出せるようになるのかも知れない
表現としては歪な形だけれども、真に貫くべき愛とは何か、と読み手に考えさせるには十分な厚みがある
こうやって感想を書いてるから、あえて、ぶっちゃけられるんだが、正直、表紙を見て、一度は敬遠しようか、と思った。ただ、店内を一周しても、何となく、気になってしまったので、意を決してみた。結果的に、私は当たりを掴んだようだ
この『ありごけ』で、漆原先生と初めて出会った身なので、妙な事は言えない立場なのだが、どうやら、漆原先生は、まず、絵で読み手にキレのいいフックを放ってくるタイプの漫画家らしいな
女の価値は顔でも胸でもなく、壊れる事すら己で疑わぬ信念が宿る目力で決まるのかもしれない、とヒロインの言動、それに目を覚まされる・・・・・・見たくなかった現実を見る覚悟を持った客の姿で、しみじみと思った
どの話も強烈、その一言に尽きる、質の高いものばかりだが、「こう来るか」と唸らざるを得なかったのは、第六話「死体とありごけ」だ。舞い込んできた仕事が変死体の処理、ヒロインがその方面の技術に精通している事、それらも驚きに値するのに、ヒロインを町に残して、フラリと姿を消していた旦那(?)の金正ミチオが、唐突としか言いようのないタイミングで、ひょっこり顔を出す、その展開には言葉を失った。こんなインパクトの与え方が出来る漆原先生、やっぱ、持ってるなぁ
この台詞を引用に選んだのは、反論したいけど、その為の言葉がパッと出てこないほどの、有無を言わせぬ説得力があるからだ。自分が正しい、本気になれる、全力を出すしかない夢から目を逸らさないで生きるって、こう言う事だろう、多分。自分の夢は、自分だけにしか見えず、追えず、叶えられず。諦めずにぶつかり続けるも、グチャグチャに再起不能なまでに潰れるも、自己責任の範疇内だ

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: コミック(小学館)
感想投稿日 : 2016年3月1日
読了日 : 2016年3月1日
本棚登録日 : 2016年3月1日

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