いぶり暮らし 5 (ゼノンコミックス)

著者 :
  • 徳間書店 (2016年11月19日発売)
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本棚登録 : 145
感想 : 7
5

あくまで、私の印象だけど、ここんとこ、他の料理漫画でも、実に凝った燻製料理を見かけるようになった。因果関係があるかは定かではないけれど、この『いぶり暮らし』が、料理をテーマに描いている一流の漫画家に影響を与えているのであれば、(1)から、この作品と大島先生を微力ながら応援してきている身としては嬉しい限り
そのまま食べても美味しい素材や料理に一手間を加える、それが燻製
面倒臭い、と思う人もいるだろう。けれども、実際、自宅で燻製をし、その美味しさを知ってしまうと、もう、そんなキモチは湧き上がってこないだろう
苦労した分、って言い方は悪いかも知れないが、かけた手間がしっかり美味しさになって返ってきてくれるのが料理の醍醐味だ
まだ、練習中ではあるけれど、『山賊ダイアリー』と同じく、狩猟免許を取得してから、この『いぶり暮らし』を読む時のキモチに変化が出てきた気がする
(5)とキリがいいっちゃいいので、改めて、この『いぶり暮らし』のどこに、自分が感想を書きたくなるほど惹かれているのか、を考えてみた
キャラクターが大きいかな、と感じた。もちろん、燻製はどれも美味しそうだ。しかし、燻製をテーマにしている以上、それが美味しそうに見えて当然。最低限のラインではなく、基盤となる要素だろう、そこは
当たり前に美味しそうに見える燻製の魅力を引き上げているのは、ストーリーの主軸を担っている頼子さんと巡
同棲中の恋人って言う、夫婦未満の微妙な距離感も重要だが、頼子さんが仕事や恋愛に対して覚える不安や悩みは、実に現実的だ。頼子さんと全く同じ状況って読み手はいないだろうが、彼女の日常と自分の毎日がどこかしら一部が重なり、そのモヤモヤに共感できる者は多いんじゃないだろうか。恋愛はともかく、仕事の葛藤に関しては、男も同意できそうだ
働いてりゃぶつかる、避けようのない、むしろ、逃げちゃいけない問題に、頼子さんが料理や巡との会話の中で向き合いながら、自分なりの答えを出すまでの過程が実に好い
この(5)に関しちゃ、これと言ったケチはない。ただ、少し不満を口にしていいなら、アツシと純一の登場が少なかったな。(6)では、もう少し、出番を増やしてあげて欲しい。また、寺西さんの活躍にも期待だ
いつも通り、どの回もお勧めだ。料理で選ぶのであれば、第34話「空の下で食べる燻製肉巻きおにぎり」だ。この回は、信濃川日出雄先生の『山と食欲と私』を意識したのかな?肉巻きおにぎりを燻製するって発想はなかったなあ。ストーリーで選ぶなら、第40話「ふたりで食べたい燻製バナナのアイス添え」だ。何となくだが、第33話「お腹いっぱい肉厚燻製サバサンド」で、頼子さんが得たモノに、それを知らないながらも巡が返球している感じがして好感が持てた
この台詞を引用に選んだのは、わかるなあ、と自然に頷けたので。一人の時間は確かに楽しい。でも、二人で分け合う「楽しい」を知ってしまうと、物足りなさも生じだす。人生には、いつのまにか失っていて、手に入れたモノがある、と気付くモノがある。また、「ないものねだり」が鎌首をもたげるのも、大人になっている証拠かな、と感じたのも大きい

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: コミック(徳間書店)
感想投稿日 : 2017年2月8日
読了日 : 2017年2月8日
本棚登録日 : 2016年11月19日

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