あさになったのでまどをあけますよ

著者 :
  • 偕成社 (2011年12月2日発売)
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本棚登録 : 2209
感想 : 230
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荒井良二さんの絵は、たくさんの色を使って、ベタッとラフに描いている印象を受けるが、そこから不思議と、現実味を帯びた温かみと懐かしさを感じさせられて、私の心の中の思い出の映像を覗いたら、きっとこんな感じなんだろうなと思う中で、空や海などのシンプルなものについては、細かいグラデーションや光の表現が繊細に描かれた上に、その場所の温度や湿度といった肌で感じられるものも漂わせている、写実的な美しさがとても印象的です。


『あさになったので まどをあけますよ』

扉絵のカーテンから始まる、この絵本は、たとえ昨日何があろうとも朝は必ずやって来て、新たな一日が始まる中で実感させられるのは、変わらないものがあるということであり、それはまるで、常に流動的な現代社会に於いて、とても心強く安心感を得られるようでもあり、平和の象徴にも感じられます。

そして、それを実感するには、カーテンを開けるだけではなく、あくまでも『まどをあける』のであり、そこにはきっと、お互いに境界線のなくなったもの同士が共有しあえる、風が届けてくれる空気感であったり、匂いであったり、ガラス越しでない剥き出しの景色や音であったりと、人間の五感で感じることによって、改めて、私は生きていることを実感させてくれる、大切な瞬間なんだと思います。

また、今いる部屋の窓を開けても、何も感じないんだよという人でも、そこは視点を変えてみて、それならば、自分の好きな場所を部屋にしてしまえばいいといった、そんな開放感に満ちた発想の転換も、素敵な絵で教えてくれる、これまで読んだ荒井さんのメルヘンチックな印象とはまた違った、リアリスティックな描写には、本書のメッセージも重なって、より胸を打たれるものがありました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 絵本
感想投稿日 : 2023年5月13日
読了日 : 2023年5月13日
本棚登録日 : 2023年5月13日

みんなの感想をみる

コメント 5件

5552さんのコメント
2023/05/14

たださん、おはようございます。

この絵本、大好きです!
窓を開けるときの爽やかな気分が蘇ってきます。
自分の家の窓からの景色が好きってなんて幸せなことだろう、と思います。
バンプの新曲で、『窓の中から』というのがあるんですが、聴いていたら、この絵本をちょっとだけ思い出しました。

たださんのコメント
2023/05/14

5552さん、こんばんは。
コメントありがとうございます(^^)

そうでしたか!
あとで、本棚覗いてみますね♪

『自分の家の窓からの景色が好きってなんて幸せなことだろう』
私もそう思います。今住んでいるところは、貸主さんのですが小さい庭がありまして、風に吹かれて葉っぱが鳴る音や、ごくたまに訪れる小鳥の囀る姿には、嫌なことがあった時でも、一度気持ちを落ち着かせて、私の心を穏やかに凪いでくれるようで、好きなんですよね。

すみません。最近のバンプの曲、全く聴いてないもので、初めて知りましたが、『窓の中から』は聴いてみたくなりました。ありがとうございます。

たださんのコメント
2023/05/23

5552さん、こんにちは。

『窓の中から』聴きました。
最初、フェスらしい大作だと感じましたが、朝に聴くと思いの外、しっくりくるものがあって、今日も生きてやろうと気にさせられる、いい曲だと思いました。ありがとうございます(^^)

5552さんのコメント
2023/05/23

たださん、こんばんは。

聴いてくださったんですね。
ありがとうございます!
「今日も生きてやろうという気にさせられる」
ですよね!
その言葉、藤くんに聞かせてあげたいです。(←何者)
冒頭の語りかけるような歌い方からクライマックスの拳を突き上げたくなるような盛り上がりまで、ドラマチックな歌だな、と、思ってます。
歌詞も沁みます。



たださんのコメント
2023/05/23

5552さん、お返事ありがとうございます♪

藤くんなんですね。その響きに和みます。
ドラマチックな歌、まさにそう思いまして、6分強の時間の長さも全く気になりませんよね。
良かったら、感想も書きましたので、またお時間あるときに覗いてみて下さい(なんだか強制しているみたいで、すみません^^;)。

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