1987年発表の、俵万智さんの、約280万部売れたという第一歌集ですが、当時は全く短歌に関心が無かったため、令和の今、初読みすることとなりました。
読んだ感想は・・その当時、20代前半だった俵さんの、その時代背景に於ける自然な感性に瑞々しさを感じたのと、やはり歌人と思えるような、独特な言葉遣いと、多角的視点の物語を想像させられて、単に、若さ溢れる爽やかな一面だけではない、人間の奥深さを感じられたのが、印象的でした。
特に、私の琴線に触れた歌をいくつか・・
落ちてきた雨を見上げてそのままの形でふいに、唇が欲し
わからないけれどたのしいならばいいともおもえないだあれあなたは
君といてプラスマイナスカラコロとうがいの声も女なりけり
「30までブラブラするよ」と言う君の如何なる風景なのか私は
手紙には愛あふれたりその愛は消印の日のそのときの愛
ガーベラの首を両手で持ちあげておまえ一番好きなのは誰
菜種梅雨やさしき言葉持つ国を歩む一人のスローモーション
「平凡な女でいろよ」激辛のスナック菓子を食べながら聞く
更に、中国への旅をテーマにした「夏の船」もよかった。
ゆっくりと大地めざめてゆくように動きはじめている夏の船
濃紺の東シナ海沖に来てただ空であるただ波である
今日までに私がついた嘘なんてどうでもいいよというような海
大陸に我を呼ぶ風たずさえてミルクキャラメル色の長江
兵馬桶何百何十何体の思考直立したまま眠る
長江を見ていたときのTシャツで東京の町を歩き始める
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
歌集
- 感想投稿日 : 2022年8月11日
- 読了日 : 2022年8月11日
- 本棚登録日 : 2022年8月11日
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