こちらあみ子

著者 :
  • 筑摩書房 (2011年1月10日発売)
3.57
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本棚登録 : 1644
感想 : 333
4

今村夏子さんのデビュー作だが、私的には、これまで読んだ作品の中で、いちばん好きです。

太宰治賞と三島由紀夫賞を受賞された「こちらあみ子」と、書き下ろしの「ピクニック」の二編が収録されていて、どちらも、今村さんの作品にしては、救いのある、爽やかな終わり方が印象的でした。

「こちらあみ子」では、主人公「あみ子」の真っ直ぐで破天荒な個性ばかり注目されがちだが、その裏には、複雑で繊細な家庭環境の影響を受け続けた結果、やむを得ない部分もあって、そうした表側からは分かりづらい、家庭事情の問題提起をしているようにも思われました。

そうした中で、終盤にちらりと見せた、あみ子にとって、初めての後悔のような、これまでと違った一面には、はっとさせられるものがありました。

また、「ピクニック」は、ローラースケートを履いた、水着姿の女の子たちが接客するガールズバーで働くルミたちの、後輩にあたる七瀬さんへの無償の優しさに、とても心を打たれ、七瀬さん自身を可哀想な人だという思い自体を、あっさり吹き飛ばしてくれるような軽やかで自然な温情に、人間の絆の強さを思い知りました。名作。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2022年5月15日
読了日 : 2022年5月15日
本棚登録日 : 2022年5月15日

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コメント 3件

hiromida2さんのコメント
2022/05/22

たださん、こんにちは♪
そうです!そうですとも(*^o^*)
私も今村夏子さんの本、大好きです♡
「こちらあみ子」特に好きな作品です。
たださんのレビューを拝見して、
また情景を再び思い返しました。
今村夏子さんって稀有な
  素晴らしい作家ですよね。
何だか同じ感覚で嬉しくて
思わずコメントしてしまいました。

たださんのコメント
2022/05/22

hiromida2さん、こんばんは。

コメントありがとうございます。

同じ感覚という言葉に、私も嬉しい気持ちになりました(^_^)

先程、hiromida2さんの、「こちらあみ子」のレビューを拝見しまして、その作品に対する思いの強さを、とても実感いたしました。

私が、これまでイメージしていた今村さんの作品は、独特の不穏さの中に見え隠れする、人間の滑稽さや情に、惹かれるものを感じていたのですが、「こちらあみ子」に関しては、デビュー作だからでしょうか。何か、文学に徹し切れずに、今村さん自身の感情が微かに残っている気がしまして、他の作品と比較して、温情めいたものを感じたのが、とても印象的でした。

すいません。
気付いたら、こんなに長々と書いてしまいました(^_^;)

hiromida2さんのコメント
2022/05/22

たださん、
度々すみません。コメントの返信ありがとうございます♪
なるほど〜と頷きながら感慨深く
読ませて頂きました。
同じ好きな作家さんの作品について
語らえるのは、とても貴重で嬉しいです。

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