今村夏子さんのデビュー作だが、私的には、これまで読んだ作品の中で、いちばん好きです。
太宰治賞と三島由紀夫賞を受賞された「こちらあみ子」と、書き下ろしの「ピクニック」の二編が収録されていて、どちらも、今村さんの作品にしては、救いのある、爽やかな終わり方が印象的でした。
「こちらあみ子」では、主人公「あみ子」の真っ直ぐで破天荒な個性ばかり注目されがちだが、その裏には、複雑で繊細な家庭環境の影響を受け続けた結果、やむを得ない部分もあって、そうした表側からは分かりづらい、家庭事情の問題提起をしているようにも思われました。
そうした中で、終盤にちらりと見せた、あみ子にとって、初めての後悔のような、これまでと違った一面には、はっとさせられるものがありました。
また、「ピクニック」は、ローラースケートを履いた、水着姿の女の子たちが接客するガールズバーで働くルミたちの、後輩にあたる七瀬さんへの無償の優しさに、とても心を打たれ、七瀬さん自身を可哀想な人だという思い自体を、あっさり吹き飛ばしてくれるような軽やかで自然な温情に、人間の絆の強さを思い知りました。名作。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2022年5月15日
- 読了日 : 2022年5月15日
- 本棚登録日 : 2022年5月15日
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コメント 3件
hiromida2さんのコメント
2022/05/22
たださんのコメント
2022/05/22
hiromida2さんのコメント
2022/05/22