引率の先生含めた、推研と映研の五人の高校生たちが遭遇する、二つの殺人(密室殺人と解体殺人)の謎は、オーソドックスながら、丁寧なストーリー構成と巧みな伏線で、推理好きの方なら楽しめる作品だと思います。ちなみに私の場合、ベタすぎるオチも全く気付きませんでした。情けない。それでも、悔しいというよりは、痛快すぎて笑ってしまったが。
また、戦後が舞台ということで、戦前と戦後の価値観が大きく変わろうという境目において、悩みながらも青春を謳歌する主人公たちの、爽やかな姿が印象的で、新たな価値観というのが、そもそも存在していない未知のものだと、なかなか理解することができないことを、改めて再実感しました。今を生きる自分にとっては当然なことでも。
もう少し細かく書くと、最初から探偵役がいるわけではないので、物語の中で一緒に考えるというよりは、自ら読みながら伏線や気になるところを見つけていく感じで、青春要素がやや強いようにも思われました。しかし、探偵役が成長している一面も描写されていて、これが二作目なのだと実感。推理の要素は古典的な本格ものなので、一作目も読んでみたくなりました。犯人の動機や切ない胸中にも共感しましたし、表紙の絵が、あの切ない名シーンを描いていることも素朴な良さがあり、好きです。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2021年7月31日
- 読了日 : 2021年7月31日
- 本棚登録日 : 2021年7月30日
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