たかが殺人じゃないか (昭和24年の推理小説)

著者 :
  • 東京創元社 (2020年5月29日発売)
3.32
  • (47)
  • (157)
  • (209)
  • (62)
  • (17)
本棚登録 : 1857
感想 : 212
3

引率の先生含めた、推研と映研の五人の高校生たちが遭遇する、二つの殺人(密室殺人と解体殺人)の謎は、オーソドックスながら、丁寧なストーリー構成と巧みな伏線で、推理好きの方なら楽しめる作品だと思います。ちなみに私の場合、ベタすぎるオチも全く気付きませんでした。情けない。それでも、悔しいというよりは、痛快すぎて笑ってしまったが。

また、戦後が舞台ということで、戦前と戦後の価値観が大きく変わろうという境目において、悩みながらも青春を謳歌する主人公たちの、爽やかな姿が印象的で、新たな価値観というのが、そもそも存在していない未知のものだと、なかなか理解することができないことを、改めて再実感しました。今を生きる自分にとっては当然なことでも。

もう少し細かく書くと、最初から探偵役がいるわけではないので、物語の中で一緒に考えるというよりは、自ら読みながら伏線や気になるところを見つけていく感じで、青春要素がやや強いようにも思われました。しかし、探偵役が成長している一面も描写されていて、これが二作目なのだと実感。推理の要素は古典的な本格ものなので、一作目も読んでみたくなりました。犯人の動機や切ない胸中にも共感しましたし、表紙の絵が、あの切ない名シーンを描いていることも素朴な良さがあり、好きです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年7月31日
読了日 : 2021年7月31日
本棚登録日 : 2021年7月30日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする