4巻にして、物語は早くも佳境に入っていき、求める物を見つけ出すべく、双子の弟レイストリンは、史実通りに事を為すべく、《ドワーフゲイト戦争》に便乗して、様々な戦略を練っていくのだが、ここに過去に遡行してきたことによる、様々な不確定要素が重なることで、その通りにならない可能性も出てきており、再び史実通りにするために・・といった要素は、第三者的視点で読むと面白いのだが、当事者側に立てば、たまったものではないだろう。
特に、本書に入って、ますますレイストリンの感情の起伏が激しくなっていくのを見ると、いよいよ、目的地が近付いている緊張感を覚えると共に、彼の目的の為には手段を選ばない、その非情さに、何とも言えない思いも過るのだが、私にとって、意外だったのは、彼のそうした常軌を逸する行動の裏に、母親の悲しき運命が関わっていた事には、胸の痛む思いにさせられ、彼は彼で、自分自身にしか分からない複雑な気持ちを抱いていたのだなと、ここに来ての、新たな彼の素顔の別の一面が登場したのには、とても驚かされた。
とは言っても、やはりその非情な行いは許せないものがあり、特に今回のシリーズのタッスルホッフに対しては、『戦記』で一緒に冒険をしてきた間柄だけに(たとえ本音は仲良くなかったのだとしても)、尚更、やるせない悲しみが募っていったが、終盤のあの展開には、一縷の望みを感じさせられた。
また本シリーズは、もしかしたら、双子の兄キャラモンの物語なのではという思いが強くなり、最初に酒浸りでいた時はどうなるものかと思ったが、これまでずっと彼の中にあった蟠りも、ようやく解消された気がしており、それは双子の兄にとって、あまりにも衝撃の強いものを立て続けに体験した上で、それでも、そんな弟を受け入れることが出来るようになるまで、度量の広さを持てるようになったのは、彼のこれまでの過保護に近い兄弟愛とは違った、レイストリンは弟ではあるものの、それ以前に一人の人間であることを認めた証でもあり、そうしたキャラモンの成長を見ながらも、彼の故郷を恋しく思う気持ちには思わず、『戦記』から読んできて良かったと思わせる、仲間たちへの愛を感じさせられて、私にはとても嬉しかった。
ただ、もうちょっと、夢見させてよ(笑)
前巻であれだけの幸せな光景を見せられて、もしかしたらって思ったけど、まあ、これはこれで納得させられる感もあったし、二人とも、ようやく大人になったのだなといった感慨も抱けたので、良しとするか。
でも、この終わり方はいったい?
まるで、これで伝説は終了しましたよと言っても、決して過言ではないエンディングが、逆に、次巻を早く読ませてくれと煽ってしまいそうで、なんとも心憎い終わり方だこと。
というわけで、緊迫の5巻に続く。
- 感想投稿日 : 2023年4月30日
- 読了日 : 2023年4月30日
- 本棚登録日 : 2023年4月30日
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