付添い屋・六平太 麒麟の巻 評判娘 (小学館文庫 か 35-8)

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  • 小学館 (2016年7月6日発売)
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感想 : 7
3

博江の楚々としたたたずまいが
江戸の人気番付に載った。
大変な騒ぎになり
博江は、困惑するが……。

江戸は元鳥越に住まいして、立見流兵法の遣いてで、信濃国十河(そごう)藩加藤家を出て浪人となった秋月六平太(ろつぺいた)が、口入れ屋・もみじ庵からの紹介で裕福な商家の子女の芝居見物などの付添い屋を生業とする人情物語です。

六平太の義妹・佐和は、六平太の父の後添えになった多喜の連れ子だった。その佐和が、火消しの音吉との間に授かった勝太郎が可愛いくて六平太は、よく顔を見に行く。そして、六平太は、元旅籠町の代書屋「斉賀屋(さいがや)」で働く博江になにくれとなく世話を焼き。ひとりで頑張って生きて行く博江が気になっていく。

【大根河岸】
日本橋南鍛冶町の青物問屋「加島屋」の主・幸之助は、下赤塚の富士講の帰りに10才くらいの娘・千草を連れたお清にあった。お清は、幸之助と加島屋に一緒に勤めていて深い関係になっていた。お清は、千草は幸之助の子だと。それからは、ひとりで富士講に行ってお清の所に泊まるのを楽しみにしている。

【木戸送り】
六平太が目を凝らすと、八幡宮門前の木戸が閉まりはじめた。
拍子木は、四つ(午後十時)の合図だった。
町の境にある木戸は、防犯上、四つになると一斉に閉められる。
「すまねぇ、木戸を通してんな」
急ぎかけつけた六平太が、年のいった木戸番を片手で拝んだ。
「行先と名をお聞かせ願います」
「元鳥越 市兵衛店 秋月六平太」
別段怪しむことなく、木戸番が脇門を開けてくれた。
「すまねぇ」
片手を上げて通り過ぎた六平太の背中で、拍子木が打たれた。
次の木戸に、通行人があることを知らせる合図である。
元旅籠町一丁目の木戸に近づくと、
「なんだ秋月さんでしたか」
待っていた木戸番が微笑を浮かべた。
「浅草でつい時を忘れてな」
六平太が、開けられた脇門を潜った。
「お気を付けて」
「おう」
木戸番に応えて、六平太が歩を進めた。
背後でまた、拍子木が打たれた。
次は森下町の木戸への合図だ。
六平太が、木戸から木戸へと町送りをされたのはひさしぶりのことであった。
81頁~82頁。

【評判娘】
博江が「当世 評判女」の人気番付の前頭八枚目に「楚々としてまことにたおやかなり」と載った。それからというもの博江を見ようと奉公先の元旅籠町の代書屋「斉賀屋」に人が押しかけてくる。その中に六平太もいた。六平太は、付添いの仕事で上得意の「飛騨屋」の親子を案内してきた。その好奇の目にさらされて博江は、困惑する。

【二十六夜】
巳之助は、蝋燭問屋「梅花堂」市松の女房・小糸の父親・文吉をあやまって殺して遠島になっていたが、赦免になって帰って来た。文吉は、梅花堂の跡継・市松が小糸を嫁にほしいと聞き、恋仲であった小糸と巳之助の間を裂こうとした。

【読後】
1830年頃の江戸の町の風情がこまやかに書かれています。町人文化が大きく花開いた江戸が楽しく、想像が膨らんでいきます。
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鳳凰の巻 強つく女 ― 付添い屋・六平太シリーズの8作目
2016.07発行。字の大きさは…小。2022.08.01~02読了。★★★☆☆
大根河岸、木戸送り、評判娘、二十六夜、の連載短編4話。
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読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 時代小説
感想投稿日 : 2022年8月3日
読了日 : 2022年8月2日
本棚登録日 : 2022年7月27日

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