居酒屋兆治
2016.02発行。字の大きさは…大活字。
赤提灯のもつ焼き屋に来る客と店主のやり取りを、人情味たっぷりに書いています。
駅近くの居酒屋兆治を営む藤野伝吉は、地元の小学校で野球選手をしていました。勤めた会社で急遽、人事課長になったが、その仕事は、リストラの首切り役であり。伝吉は、できず退職し、その後、10日間モツ焼き屋で修業して、赤提灯のモツ焼き屋を始めました。
客は、地元の小学校の先輩、後輩が半分ほどをしめ、1日の売り上げが2万円を超えると、残った物をサービスで出し、自身も飲みだすような、あまり儲けようとしない店です。そこに来る客がおりなす物語が面白いです。
特に、伝吉の昔の女さよが、嫁ぎ先の神谷鉄工の若い社員と家出して、伝吉にすり寄ってくる様は、本当になんとも言えないものがあります。神谷は、さよを連れ戻すために警察に依頼して、伝吉を別件で逮捕して、留置所に入れ、伝吉が黙秘すると、このままでは正月は留置場の中で過ごすことになると、又、春まで居てもらうことになると脅迫するシーンは、嫌な物が有ります。
結局さよは、伝吉の近くの勤め先のキャバレーで、ウイスキーをストレートで飲み続けて食道静脈溜破裂で亡くなりました。まさに死に急いだような生活を送っていました。そして、最後まで伝吉を気にかけて近くにいたのです。葬儀で兆治の客が……まさに、人生の愛憎劇です。
【読後】
感想を書いて、登録して、少しして、さよを考えると伝吉に対する純な気持ちが一途に貫かれていたのかなと思えてきます。そうすると、この物語は青春小説なのかと思えてきますが。さて物語は、ドロドロして、喧嘩有り、女あり(男もありますよ)と人生の縮図のような赤提灯で、店主と客がおりなす愛憎劇です。山口瞳さんの本を読むのは初めてです。
【音読】
3月27日から4月5日まで音読で読みました。底本が、新潮文庫のため登録は、新潮文庫「居酒屋兆治」で行います。
【連載、映画、テレビ】
この物語は、著者が「波」編集部から連載小説を依頼され、題材を家の近くの東京・国立の広さ5坪の縄のれんのモツ焼き屋を舞台に、赤提灯の店に毎晩飲みに来る客のさまざまな愛憎劇を記録して日記風の小説に書いたものです。1979年10月号から1980年11月号まで全14話の連載です。
1983年に降旗康男監督、高倉健主演により映画化。
また1992年に渡辺謙主演により、2020年に遠藤憲一主演によりテレビドラマ化。
2021.04.05読了
- 感想投稿日 : 2021年4月5日
- 読了日 : 2021年4月5日
- 本棚登録日 : 2021年3月26日
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