廃墟となった遊園地に存在する動物霊園の噂。
自分の最も大切な物と引き換えに弔いをしてくれるという墓守の青年。
現代を舞台にしたミステリ仕立てのダークファンタジー。
連作短編が5編。
『退出ゲーム』で見せてくれた冒頭からラストへかけての予想外の着地はここでも健在。ただし甘さや笑いは全くないビターな味わい。
基本的に、不幸な動物たちが埋葬されるところから話が始まるので気分は重い。
夢の中に居るかのような幻想的な世界観でありながら、登場人物の職種や人となり、事件の概要は現実的で妙に生々しい。しかしその匙加減が絶妙で不思議な読み心地。
『カマラとアマラの丘』
狼に育てられた少女の有名な逸話がモチーフ。
ゴールデンレトリバー、そして心理療法士。
『ブクウスとツォノクワの丘』
雪男伝説と研究者。
『シレネッタの丘』
天才インコと殺人事件、そして密室。
事件を捜査する刑事。予想だにしない結末。
このあたりから物語がさらに凄みを増してくる。
『ヴァルキューリの丘』
ハーメルンの笛吹き男を追う弁護士。
驚愕の着地点。
この話が一番面白かった。
『星々の審判』
エピローグ的な位置付け。
ミステリを読み慣れた方ならピンとくる仕掛けも中にはあるが、それにしても語り(騙り)の巧さよ。
非現実的だと思える展開をぎりぎりのラインで「ありえるかも」と思わせる説得力。リアルとファンタジーの振り分けのバランス感覚。やっぱりこの作者は凄い。
面白かったけど「是非読んで」とお薦めはしづらい。
カワイイ表紙に釣られると、かなりどんよりした気持ちになる。
- 感想投稿日 : 2013年1月31日
- 読了日 : 2013年1月31日
- 本棚登録日 : 2013年1月31日
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