綾野剛、谷原章介のダブル主演により来春、フジテレビにて連続ドラマ化決定!
なんて事実は全くありませんが、そんな妄想を大いに掻き立てられるユーモア・ミステリ。
ノーマークでしたが掘り出し物でした。
以下、妄想キャスティングを交えながらストーリーをちょっとだけ御紹介。
雲井進(綾野剛)二十九歳。
成人式を目前に、心酔した自由国民党の国会議員、漆原善壱(北大路欣也)の事務所に飛び込み、仕えること十年。
善壱のそばで黙々と仕事をこなす様から「サムライ秘書」の異名を持ち、若いながらも政界で一目置かれる切れ者。
しかし、国民のことを常に考え、いずれは党首となり、ゆくゆくは総理大臣にもなるはずであったろう善壱が急逝。
それに伴い、息子で電力会社出身のエリート、翔太郎(谷原章介)が補欠選挙に出馬。父の政策と地盤を引き継ぎ、選挙戦は圧勝。
甘いマスクと巧みな弁舌の漆原翔太郎議員に大きな期待が寄せられる。
雲井は教育係も兼ねて翔太郎の第一秘書に抜擢されるが、穏やかだったのは最初だけ。
翔太郎はとんでもないバカ息子だったのだ。
とんでもない失言の嵐と失態の数々で、マスコミとネット住民に大人気の漆原翔太郎センセイ。
そして事態の収拾に駆けずりまわり翻弄される雲井クンの姿が悲しくも可笑しい。
しかもそれが高水準のミステリとして成立しているのだから面白い。
第一話『公園』
翔太郎センセイの地元Z県のNPO法人「緑の森の会」が陳情に訪れる。
代表の戸部夏子(あき竹城)とその夫(酒井敏也)は、マンション建設に伴う「森山第九公園」の取り壊しに反対しているという。
取り壊しには社会平和党の元幹部で建築家の蜂須賀信造(石橋蓮司)が絡んでいた。しかもそこには、およそ秘書には似つかわしくない四葉明日香(壇蜜)の影が。
高潔とうたわれていた蜂須賀はただのエロ爺だったのか。
第二話『勲章』
事務所のひとときの平和。
おっとりしているようだが頭の回転が速く、優秀な人材の第二秘書鶴岡小春(本仮屋ユイカ)。
机に向かって法令集ばかり読んでいる政策秘書の一ノ瀬正男(濱田岳)。
そしてマンガを読みふける翔太郎センセイ。
地元Z県に多大な影響力を持つ東堂不動産の会長(芦屋小雁)の勲章受章への根回しを済ませ、雲井は一息ついていた。
そこへ賞勲局の女帝、冴木響子(広末涼子)から一本の電話が。
第三話『選挙』
選挙戦のため、Z県入りした雲井。
そこで、地元を取り仕切る私設秘書であり善壱の代から仕える事実上の筆頭秘書、宇治家さん(伊吹吾郎)と会う。
寿司を食べながらの世間話から、話題は機密レベルⅡへ。
このたびの選挙戦、漆原陣営にはスパイがいるという。
第四話『取材』
あらゆるビジネスを網羅する巨大グループ企業〈宮門〉
その本社一室で〈宮門〉の総帥、宮門鉄子(佐々木すみ江)と対峙する雲井。
先代、漆原善壱を長年支援してきた〈宮門〉だが、なにかとお騒がせな息子、翔太郎は一切支援するつもりはないという。
一方、新政権に対してコメント取材を受ける翔太郎。
その模様がネットに動画としてアップされるが波紋を呼ぶこととなる。
第五話『辞職』
一話完結のストーリーで、政界を舞台にしたコメディでありながら、笑いのなかに緻密に計算された仕掛けがあり、ミステリとしてはかなり楽しませてもらえた素晴らしい出来。
事件発生後、翔太郎センセイが引っ掻き回し、雲井クンが必死になって事態の収拾に務め、それをまた翔太郎センセイが台無しにし、最後に美味しいところだけかっさらっていくという構成が、コメディとしてもミステリとしても高水準。
レビューのなかのキャスティングはすべて妄想ですが、最終話の熱い展開までぜひ映像でも観てみたいなぁ。
京極夏彦の『百鬼夜行シリーズ』に登場する探偵、榎木津礼二郎にも少し印象が重なる漆原翔太郎センセイ。
はたして彼は天才なのか、それとも運がいいだけのおバカなのか。
それは実際に読んで確かめてみてください。
そして天祢涼センセイ、どうか続編を書いてください。
- 感想投稿日 : 2013年9月3日
- 読了日 : 2013年9月2日
- 本棚登録日 : 2013年9月2日
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