生涯で最高の一本を観てしまった。
フルートの旋律が静かに響くエンドロールの暗がりから、現実世界に戻りたくなかった。
これをスクリーンで上映してくださった、福岡映画サークル協議会のみなさまにお礼を申し上げます。
全編、寸分の無駄もない美しいカット。
でもそれは決してきらきらと眩いものではなく、
聖堂の朽ちたフレスコ画のような美しさ。
そして、主役の少女アナ・トレントの愛くるしいこと。
黒く大きくつぶらであどけなく、それでいて意志の強い瞳。
「天使のような」という形容があるが、天使そのもの。
しかし、天使はほとばしる生命力だけではなく死をも司る。
映画内に繰り返し挿入される死のイメージ。
毒キノコの痺れがゆっくりまわっていくように、
観ている側も甘く絡めとられていく。
物語の冒頭、村で上映される『フランケンシュタイン』
あれは暗示だったのか、それともあれに導かれたのか。
ストーリーを語れるのであれば、この映画は撮られる必要はなかった。
映画でしか語ることのできない何か。
「感動」という言葉が、心を動かされる、感情を揺さぶられるという意味ならば、確かに感動した。
嬉しかった、楽しかった、悲しかった、切なかった。
腹立たしかった、憤った、寂しかった、癒された。
面白かった、豊かだった、味わい深かった、幸せだった。
きっと、どれでもない。
いや、そのどれをも包括し、どれをも越えた神々しいもの。
この気持ちを表す言葉は未だ発明されていない。
だからこそ映画なのだろう。
- 感想投稿日 : 2013年3月3日
- 読了日 : 2013年3月3日
- 本棚登録日 : 2013年3月3日
みんなの感想をみる