ミツバチのささやき [DVD]

監督 : ビクトル・エリセ 
出演 : アナ・トレント  イザベル・テレリア  フェルナンド・フェルナン・ゴメス  テレザ・ジンペラ 
  • 東北新社
4.05
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本棚登録 : 762
感想 : 109
5

生涯で最高の一本を観てしまった。
フルートの旋律が静かに響くエンドロールの暗がりから、現実世界に戻りたくなかった。

これをスクリーンで上映してくださった、福岡映画サークル協議会のみなさまにお礼を申し上げます。

全編、寸分の無駄もない美しいカット。
でもそれは決してきらきらと眩いものではなく、
聖堂の朽ちたフレスコ画のような美しさ。

そして、主役の少女アナ・トレントの愛くるしいこと。
黒く大きくつぶらであどけなく、それでいて意志の強い瞳。
「天使のような」という形容があるが、天使そのもの。
しかし、天使はほとばしる生命力だけではなく死をも司る。

映画内に繰り返し挿入される死のイメージ。
毒キノコの痺れがゆっくりまわっていくように、
観ている側も甘く絡めとられていく。

物語の冒頭、村で上映される『フランケンシュタイン』
あれは暗示だったのか、それともあれに導かれたのか。

ストーリーを語れるのであれば、この映画は撮られる必要はなかった。
映画でしか語ることのできない何か。

「感動」という言葉が、心を動かされる、感情を揺さぶられるという意味ならば、確かに感動した。

嬉しかった、楽しかった、悲しかった、切なかった。
腹立たしかった、憤った、寂しかった、癒された。
面白かった、豊かだった、味わい深かった、幸せだった。

きっと、どれでもない。
いや、そのどれをも包括し、どれをも越えた神々しいもの。

この気持ちを表す言葉は未だ発明されていない。
だからこそ映画なのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 外国映画
感想投稿日 : 2013年3月3日
読了日 : 2013年3月3日
本棚登録日 : 2013年3月3日

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コメント 2件

峨眉書房さんのコメント
2013/05/05

御無沙汰しています。メッセージありがとうございました。
メッセージをもらった後、何気なく知人に「ミツバチのささやきをスクリーンで観たって方が・・・良いな~」と話したら、その知人が偶然DVDを見つけ、入手してもらえました!

観てからメッセージを書き込みたいと思い返信遅くなってすみません。

蜂の巣の中に居るような模様の窓が、とても印象的でした。夜、六角形が並ぶ窓から映る光の色が、幻想的で、美しかった。

幻想的な世界に死の世界がぴったり寄り添っていて、私にとっては夜中にみる夢のような世界でした

kwosaさんのメッセージのおかげで、この映画と縁が持てました。ありがとうございました

kwosaさんのコメント
2013/05/06

峨眉書房さん!

お久しぶりです!

なんと、DVDを入手されたとは。なんてうらやましい。
それにしても素敵なご友人ですね。

本当に、光の色が美しかったですね。
琥珀色というか飴色というか、そう、言うなれば蜂蜜色。

>私にとっては夜中にみる夢のような世界でした

まさにその通りですね。
上映が終わって劇場に灯りがともるのが悔しい、夢から覚めたくない。
僕はそんな気持ちでした。

縁とは不思議なものですね。
こちらこそ素敵なメッセージをありがとうございました。

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