生き延びるためのラカン (ちくま文庫 さ 29-3)

著者 :
  • 筑摩書房 (2012年2月8日発売)
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本棚登録 : 863
感想 : 66
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精神分析を身近に感じる貴重な機会。

7/7の七夕の日に、久しぶりに猫町倶楽部の読書会に参加してきました。
今回はラカンが課題本とあって、非常に楽しみにしていました。
なぜなら僕は昨年から哲学を読むことに挑戦しており、
ラカンはいつか読んでみたいと望んでいたからです。

この本自体、精神分析入門の本だと読書会に参加するまで知らず、
少々恥ずかしい思いもしたのだが、それでこそ読書会。
自分が気付かない視点を気づかせてくれるのが何といっても読書会の醍醐味。

ラカンの入門書をこのように簡単にまとめて下さった斎藤環さんには本当に感謝です。
特に僕が印象に残ったのは「欲望は、他社の欲望である」、
「他社の欲望の根源にファルスがある」という言葉。

人間は自分では決して欲望に気付かない。
それは他の媒介、ラカンの言葉でいう対象a
(通な言い方では対象アーという)を通して欲望を持つんだとか。

斎藤環先生は欲求と欲望は違うと説明された。
欲求は一時的にしろ満足できるけど、欲望は満足することがない。
前者の例は食欲や性欲。食べたら満足するし、SEXすれは一時的にしろ快楽を得られる。
後者の例はお金だそうだ。
いくらお金をいっぱい稼いだところで、満足することはなかなかできない。

人間が他者と交わることで生きていく動物なので、
欲望がないというのは少々考えられないことだ。
日本の生活は豊かになりすぎて、「ほしいものがほしい」という言葉にもあるように
対象aが具現化されてこない。自我に作用を及ぼさない現象が起きているのか?
なんかわからなくなってきたぞ!

もうひとつ、ラカンの有名な「想像界、象徴界、現実界」というお話。
ラカンによれば我々が普段目にしているのは想像界の世界で、
これはすべて偽物なんだとか。そもそも自分の顔って本当には見えないよね。
本では鏡像現象という言葉で表現されていたけど、
鏡の中に写る自分は左右反対の自分。それは本物ではない。
だから我々が見ている世界はすべて意味がない。
そう思うと少し気が楽にならないだろうか?

上司に怒鳴られたとしても、その起きた事に全く意味がないと感じることだってできるし、
逆に大好きな女性・男性と一緒に手をつないでデートをしている自分も
実はそこに何も意味はないともいえる。

おや、じゃあ僕はなんのために生きているのかって?
それがわかれば生きていく意味ないでしょう。

とまあラカンを読みながら、こんなことまで考えてしまいました。
ラカンを読めば世界が変わる、少なくともそう感じる事ができた本でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 哲学
感想投稿日 : 2013年7月9日
読了日 : 2013年7月7日
本棚登録日 : 2013年7月9日

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