どん、と強い衝撃を、何度も受ける一冊。
痛かったり、恥ずかしかったり、羨ましかったり、色々な種類の衝撃を不意討ちで、喰らいます。
「地の文」が一切なく、登場人物が他の登場人物に宛てた手紙だけで物語は進みます。
主人公が高校2年生であった時を起点にした、約20年間が描かれています。
同級生への淡い恋心、先生の悪口、同級生の噂話、受験、進学…
そんなことで埋め尽くされていた手紙の内容は登場人物達が年齢を重ねると共に変化していきます。
別離、結婚、不倫、奪取、離婚…。
彼らに起きた様々な出来事が、変化する手紙の内容から、推察されます。
手紙というのは、ある程度自分を客観視していたり、
少なくとも自分の気持ちを文章にできる程度に整理できていないと書けないもので、その上でどうしても他者に伝えたい気持ちが詰まったものなので、出来事の受け止め方や、人の心について、核心をついている表現が多く、そういう意味で、色々な種類の衝撃を受けたのだと思います。
作中にはいくつか、投函されない手紙も登場します。これが非常によい持ち味を発揮しています。
伝えたいと思って書いた後に思い直して、自分の中に仕舞う感情。
これが手紙の書き手の本心を表していて、作品全体をぐっとリアルに仕上げています。
結局投函されなかった手紙の中に
「なんていうのかな、わがままを言ってくれなきゃ応対できないんだよ、他人は。わがままを、ありったけのわがままをぶつけることが、それが他人を好きになるということなんだ。好きな人にはわがままを言われなければ意味がないんだ。
こんなことを言ったら相手に悪いとか、こんなことをしたら相手に悪いとか、そういうことを考えることがもう、冷たいことなんだ。」
という文がありました。強く印象に残りました。
とても素敵な一冊に出会えました。おすすめ。
- 感想投稿日 : 2022年10月1日
- 読了日 : 2022年10月1日
- 本棚登録日 : 2022年10月1日
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