獲る・守る・稼ぐ 週刊文春「危機突破」リーダー論

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  • 光文社 (2021年7月27日発売)
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・P56:監督ではなく、「GM」思考で任せる。
私は前の部署で必ずしも評価されていなかった人にも先入観を排して「あなたに期待するのはこういう仕事だから、よろしく頼みます」と伝える。その結果、大活躍してくれたケースが実はたくさんあるのだ。

人事はもちろん適材適所。そのときにその部署に必要な人材とは、どんな能力を持った人物かを、好き嫌いではなく、虚心坦懐に考えて粛々と行うべきものだ。

まさにプロ野球のGMのように、勝てるチーム作りが実現したら、あとはひたすら監督を信じて任せる。もちろん細かいメンテナンスは必要だろう。トラブルの種があれば深刻化する前に乗り出して処理するし、責任を問われる場面があれば逃げずに前に出る。ただあくまで主役は選手であり、監督なのだ。

・P64:"コンサル名人"と"コンプラ奉行"に対抗する。
まずコンサル名人には、数字で示すことが有効だ。スクープが週刊文春の部数やPVにどれだけの好影響を与えているか、動画などの使用料がどれくらいの収益を上げているかは数字を見れば明らかだ。

コンプラ奉行に対しては、法的な理論武装を心がける。我々は文藝春秋の法務部、顧問弁護士と共に取材のガイドラインを作っている。

・P68:リーダーの「顔」は、オープンソースである。
編集局長の仕事をまとめると、
 1. 筋のいい戦略を立てる。
 2. その内容について編集長としっかりと話し合い、コンセンサスを得る。
 3. 戦略を実現する上で最適なチームを構想する。
 4. 人事・実務面で社内調整と根回しをする。
 5. あとは編集長を信じて任せる。
 6. トラブルが起きたら出ていって収める。場合用によっては自ら責任を取る。
ということになる。

・P90:朝令暮改を恐れず、走りながら考える。
リーダーは朝令暮改を恐れてはいけない。戦況は生き物であり、刻一刻と変化している。その変化に神経を研ぎ澄まし、極力フリーハンドを維持しながら、戦略の優先順位をジャッジしなければならない。デジタルという戦場においては、立ち止まっていてじっくり考える余裕などない。常に走りながら考えるのだ。

・P147:大きな批判は、大きな教訓となる。
ネット上での炎上の激しさを前にしたら、誰でも逃げ出したくなる。だがそこで逃げずに、怒りの声に向き合い続ける。それは自分達を客観的に見ることにつながる。一方で、大切な幹は守る。リーダーは背中を丸めて下を向いては行けない。常に広い視野で戦況を分析し、冷静な判断を下さなければならないのだ。

・P221:長いものに巻かれることなく、信頼関係を作れ。
熊崎さんのような豪放磊落に見える人でも、組織を大胆に動かすためには細心の注意を払っていたのだ。これは「長いものには巻かれろ」という意味ではない。組織の最終的な決定権や人事権を握っているのは誰なのかを常に意識しておくことは、大きな仕事をする上で重要なのだ。トップとの間に信頼関係がないとやれることには限界があり、組織で単なる非主流派の反乱分子のように思われたら粛清されるだけだ。

・P227:マニュアルのない時代こそ、「編集」の力が必要だ。
編集は、単に雑誌や本を作れることだけを指すのではない。世の中で起こっているさまざまなことをいかに面白く、わかりやすく伝えていくのか。そのためにはどんな材料が必要で、どんな形で加工すればいいのか。プロデューサー意識を持って、最後はマネタイズにまでつなげていく。それを考えるのが編集なのだ。

・P24:自分の仕事に、誇りと愛が持てるか。
自分の仕事、所属する組織に限界を感じ始めた時の判断基準は三つある。
 1. 自分の仕事に誇りと愛が持てるのかどうか。会社の看板を磨く気持ちになれるのかどうか。
 2. 実際に改善される見込みがあるのかどうか。精神論以前に、体質や構造そのものが時代とあまりにかけ離れてしまい、自分の力ではどうにもならないと思うなら辞めた方がいい。
 3. 社内に同志がいるかどうか。このままではダメだという問題意識を共有できる人間がいるかどうか。あるいはあんなふうになりたいと思える先輩がいるかどうか。あの人について行けば、あの人と一緒に戦えば何とかなると思えるような人がいればシビアな状況でも耐えられる。

・P266:変わらないために変わろう。
三井住友ホールディングスCEOの太田純さんに「大乱世のリーダーに必要な資質とは何ですか?」と聞いたことがある。太田さんの答えは実に明快だった。
 「一にストレス耐性、二に変化を楽しむ、三に失敗を恐れない」
自らにとって大切な「幹」は細心の注意で守り抜く。そしてそれを守るためには、大胆に変わることも恐れない。変わらないために変わるのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年9月18日
読了日 : 2023年9月18日
本棚登録日 : 2023年9月18日

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