読書について 他二篇 (岩波文庫)

  • 岩波書店 (1960年4月5日発売)
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感想 : 14
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思索・文体・読書について三篇で構成されており、どの篇も難解すぎるものではなく、短いので非常に読みやすい。
本書を通じて特に心に残った個別要素は2点。

1点目は、文体は所詮、思想の影絵に過ぎず、書き方が不明瞭か拙劣であることは、考え方が曖昧または混乱しているかのいずれかであること。分かりにくい難解な言葉で表現しようとするのではなく、具体的な表現で書くべきである。「普通の語で非凡なことを言うこと」が理想である。

2点目は、多読は自分でものを考える力を失わせること。読書というのは他人の頭で考えてもらうことであり、自分の頭で思索することができなくなってしまう。多読はさまざまな思想を自身の精神に押し付け、精神から弾力性を奪い去ってしまう。

個別では以上が気にかかった。また全体を通しての主張で、最も気になったことは、現代(当時19世紀)の大量に生産・消費される書籍は敬遠すべきで、古典を初めとする真なる書籍に取り組むべきということである。
前者は悪書が多く、金のために書かれた作品が多いため、精神に悪影響が出る。一方後者は真に文学のために書かれており、真に私たちを育て、啓蒙する。
21世紀の現代ではより顕著にその傾向が見られると思う。著者と読者の壁がどんどん薄くなり、筆をとる者も以前に比べてかなり多い。その結果大量の書籍が産み出され、大半が悪書であろう。そういったなかで良書を読むための条件は、悪書を読まないことだという。悪書は大抵数年で淘汰されることから鑑みるに、100年・200年以上読まれている書籍に真に取り組むのがよいのかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年6月13日
読了日 : 2020年6月13日
本棚登録日 : 2020年6月7日

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