ピンチョン初期の短篇を集めたもの。
暗喩や伏線の鮮やかさは今更いうまでもないが、音韻への過度ともいえる拘りのほか、ストーリーを対位法的に展開させたり、現代に至るまで続く軋轢や葛藤(たとえば植民地主義や人種差別など)をランダムに主題化してみたりと、短篇でよくここまで書けるものだと、読みながら圧倒される。
中でも比較的読みやすいのは「秘密のインテグレーション」で、悪ガキたちが大人たちに対して様々なイタズラを仕掛けようとする中で、大人たちによる黒人差別の"悪"を際立たせるようなつくりとなっている。
そこには【子ども vs 大人】という単純な対立軸のみならず、
【こっそりと行う差別・陰謀 vs 堂々とする迫害・イタズラ決行】、あるいは、
【integration(積分、そこから転じて人種的統合) vs differentiation(微分のほかに差別の意味もある)】
という二項も立体的に絡み合っている(ように感じる)。
なおかつ、唐突な場面転換によって散らされた伏線が、最後にはすべて回収・収斂してインテグレートされてしまう、という話の持って行き方。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2016年5月1日
- 読了日 : 2016年2月15日
- 本棚登録日 : 2015年7月11日
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