迷宮 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2002年5月17日発売)
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『欲望の原理で動く社会の中で、現代人はひどく苛立っている。次から次に物質を手に入れながら、どうしても手に入らないのが心の満足だと気がついて、乾ききっている。』

『責任ってあるでしょう。生きていれば、誰だって生きてるからには責任はありますよ。病気がやったことだからと言うかもしれないけれど、そんな病気になった責任がありますよ。そんな病人をほっといた責任はありますよ。空から、星が落ちてきて、隕石が落ちてきてぶつかって死んだんじゃないんだから。』

『責任は問えますよ。問わなきゃ世の中こわれますよ。処罰はできない、と言われるんならまだわかるんです。不服だけど、それはしょうがないかもしれないと思う。だけど、罪はない、というのはね、それはいやですよ。罪は絶対あるわけでしょう、やったことへの。』

『人間のことを、完全に知るには一年間の、その中で何度も会った、ドライブもした、スキーにも行ったというだけでは、材料が少なすぎるんです。』

『だから、こういうふうにしか答えられませんよ。井口は昔から人を殺しそうな奴だったかときかれれば、そんなこと全然考えられませんでした、ですよ。それで、じゃあ井口がやったのは信じられないくらい意外なことかときかれるなら、答えは、そうとは思いません、です。人間って何をやるかわかりませんから。変ですか、おれの言ってること。』

『人間は他人のことを考えて行動しなくてもよいと考えるんですか。』
『よいとか、悪いではなく、誰も他人のことなど考えない、ということです。親が子供を産む時には、親は子供のことなど考えていません。自分の都合で産むのです。子供はそのことで親に文句を言うことはできません。親が子供を産むのと同じように、私は藤内さんを殺しました。』

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2011年11月19日
読了日 : 2011年11月19日
本棚登録日 : 2011年11月19日

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