もしもし、運命の人ですか。 (MF文庫 ダ・ヴィンチ ほ 2-1)

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  • メディアファクトリー (2010年12月21日発売)
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『膀胱炎になってもいいからこの人の隣りを今は離れたくない』

『冷蔵庫が息づく夜にお互いの本のページがめくられる音』

『年齢や血液型や出身地や兄弟の有無などのデータを教えないまま、彼女とつきあい始めたらどうなっていただろう。それによって、お互いの「ときめき」は引き延ばされたのではないか。
ペンネームなどの別名のない人は、「まあくん」「ちいちゃん」等のあだ名を告げることにする。あだ名で呼び合って、お互いの本名も年齢も知らない夫婦。想像しただけでどきどきする。
そして、毎年の結婚記念日に「贈り物」として、ひとつずつ互いのことを教え合うのだ。
例えば、一年目。
「僕はO型」
「あたしも」
「やった。輸血できるね」
或いは、五年目。
「わたし、32歳なんだ」
「僕は29歳」
「えー、年下だったの」』

『相手の過去にやきもちをやくことを「さかのぼり嫉妬」と云って、これは人間が抱く全ての感情のなかで最も不毛なもののひとつだ。「さかのぼり嫉妬」のサイクルに入ると、出口のない愛情証明を求め始めて大変なことになる。
何が、「ぴょん」だ。
前の彼氏にも、それをやってたんだろう。
おんなじことやりやがって。
俺は、ウサギなんて絶対、認めないぞ。
ネコもネズミも駄目だ。
本当に俺のことが好きなら、新しい動物で来い。
今まで誰にもみせたことのない俺だけのための動物。
初めての鳴き声。
初めての動き。
今すぐ。』

『ワイルドでわけのわかんない男のトラブルに関わって振り回される方が、優しくてわけのわかる男(私のこと)に夜御飯を奢って貰うより、ずっと楽しいのだ。いや、楽しいというのともちょっと違って、胸がきゅーんとなるのであろう。知ってるよ。そんなこと。』

『この笑顔の「その先」は行き止まりなのか。それならそれでもいい。とりあえず、ぎりぎりの地点まで進みたいと願う。それが食事なら食事まで、手を繋ぐなら手を繋ぐまで、キスならキスまでということだ。
嫌な相手とふたりで食事することはないだろう。だが、嫌ではないとセックスしてもいいの間には深い溝がある。問題は自分のスタンプカードの溜まり具合がわからないことだ。』

『初対面から三分で、そのひとと恋人になってもいいか、友達か、友達にもなりたくないか、というクラス分けは決まりますね。第一印象ってとても大きい。そして、案外狂いがない。それでも「一瞬」じゃなくて「三分」必要なのは、喋ってみないとわからないからです。』

『最高の自己アピールとは、結局、圧倒的な「個性」の提示に尽きるのかもしれない。』

『一緒に大きな本屋などに入って、あとについてこられると、ぞっとする。可愛いとは全く思わない。君は君の興味ある本を自由にみにいきなよ、と苦々しく思う。なんて主体性のない女性なんだろう。』

「そういうとき、本気の本気でやればあたしでも何とかなりそうかな、っていうのをわざわざ渡したりするんですよ」
「そうそう、だからうだうだ云わずに、がっとやってくれれば大丈夫なの」
「フタが開いたら『わあ、すごーい』って云って貰えるんですよ。最初からそれが云いたくて渡してるんだから」

『本当の恋人はどこにいるの?
どうしてあたしはひとりなの?
こんなのじゃないの
もっとカッコイイ人がいいの
あたしみたいな女の子
スキになんかならない
カッコイイ男の子』

『では、一瞬一瞬が生の実感に充ちているような濃い時間はどこにあるのか。
例えば、それは海外旅行とかギャンブルとか犯罪などといっな非日常的な体験のなかにあると思う。
そのなかでも最もポピュラーで大きなもののひとつが恋愛だろう。
激しい恋愛のなかで、我々は束の間の生の実感を得ることができる。
男性のタイプとしていわゆる「いいひと」が恋愛対象として女性たちから人気がないのはそのためだ。
「いいひと」との穏やかな関係には非日常性が乏しい。
日常に限りなく近い恋には恋の醍醐味がないというわけだ。「危険な男」「わからない男」「厄介な男」との恋愛の方が、生の実感装置として遥かに有効なのだ。
生の実感は死に近づくことによって得られる。
この絶対的な矛盾が日常のなかで具現化したものが恋の本質だと思う。』

『<今>を起点として無数に枝分かれする未来のルートの何本かが、きゅんきゅんきゅーんと点灯するのがみえる。それぞれの行き先は、天国か地獄か。愛か慰謝料か。指輪か包丁か。』

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年5月29日
読了日 : 2013年5月29日
本棚登録日 : 2013年5月29日

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