悲しみのゴンドラ

  • 思潮社 (1999年3月1日発売)
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Waking up is a parachute jump from dreams.(17 poems, Prelude)

詩とは、ぼくらの目の前に存在するもとの、目の前には存在しない何かとを結び合わせることだ。詩はこうしてぼくらに世界のあり方(Existence)を開示してくれる。そして、詩において先のふたつを結び合わせるひとつの営みが、“メタファー”に他ならない。

トランストロンメルの詩が輝きを放つのは、簡勁な一行の中に織り込まれた“メタファー”のはたらきの峻厳さにおいてだ。

Fantastic to feel how my poem grows
while I myself shrink.
It grows, it takes my place.
It pushes me aside.
It throws me out of the nest.
The poem is ready. (Bells and Tracks, Morning Birds)

そして詩の営みが成就される時、詩人は世界から姿を消す。
詩という営みに内在する果てしない強度(Intensity)を、
トーマス・トランストロンメルは、その極限まで生き抜こうとしている。

トランストロンメル作品の邦訳が、この「悲しみのゴンドラ」一冊のみとは残念。

興味のある方は、Robin Fulton氏英訳の“Tomas Transtromer The Great Enigma new collected poems”をお薦めします。トランストロンメル作品を幅広く読むことができます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学
感想投稿日 : 2011年10月16日
読了日 : 2011年10月6日
本棚登録日 : 2011年10月6日

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