「嫌中」時代の中国論―異質な隣人といかに向きあうか (柏艪舎ネプチューンノンフィクションシリーズ)

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  • 柏艪舎 (2013年8月8日発売)
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感想 : 4

(尖閣諸島の帰属に関する問題について、周恩来や鄧小平との「棚上げ合意」より)「問題に触れない」というのが「棚上げ」の核心ですから、その意味するところは、中国として日本の主権と実効支配を認めるものではないにせよ、すぐ解決できる妙案もないため、とりあえず尖閣問題に波風を立てずに、当面それを静かに放っておく、ということです。ところが、中国側の実際行動を見ると、むしろ問題を顕在化させる方向へと意図的にシフトしてきました。
P69
国交正常化時の中国政府からのメッセージと、現在の実際の行動に大きな隔たりがあることに気づく。それを、言動不一致と非難の対象とするだけではなく、現実的な外交を進める「したたかさ」と捉える必要があるのではないか?


「~2030年には中国のGDPは日本の四倍になり、米国も超えて世界一の経済大国になっている。そのころには中国に対する日本人のライバル心は少し減り、心から中国の大国化を認めるだろう。~」
日本人は、~中国が日本を追い抜いて大国化したという現実をみたくないのだ。中国と対抗していけると、なお思い込んでいる。しかし、中国はもっともっと大国化していく。米国さえも追い抜く。それにつれて日本人の中国への対抗心はしだいに薄らいでいくだろう。中国にはとうていかなわないと認識するからだ。中国人の方も余裕を持って弱体化した日本を眺められるようになるので、反日感情も和らぐだろう。
P88(中国共産党系メディアの男性記者の発言@2012年日中シンポジウム)

反発しあう日中両国の国民感情に対して、中国側からはこういった見方もできることに驚いた。
賛成できるかどうかは置いといて、ひとつの主張・行動における相手の内在的論理を理解する重要性と難しさを改めて感じさせられる。



~対日問題に関して世間一般の通念と異なる意見を発表したりすると、往々にして「お前は民族の裏切り者だ」と決めつけられ、この「漢奸」という言葉の爆弾を投げつけられることになるからです。
p261

そこにたとえ意図的な操作がなくとも、世論・メディアは往々にして、一部の意見は過小化され、別の一部の意見が主流として作り上げられてしまう。その特性を忘れずに、ことの本質を見極める「目」を養いたいと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: China
感想投稿日 : 2013年10月20日
読了日 : 2013年10月10日
本棚登録日 : 2013年10月20日

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