“たしかに自分は引きこもりだが、こんなところに監禁されて喜ぶほど、被虐的な引きこもりではない。
引きこもるなら、自分の好きな場所でないと意味がない。引きこもり生活とはある意味では最高のわがままなのだ。
(兄さまが待ってる、黒烏州の邸に帰るんだ)
——正しく引きこもるために。
もしここに蒼刻がいれば「いやその理屈はおかしい」とでも即座につっこんでいたはずだが、朧月一人では残念な思考に歯止めがかからない。
蒼刻にきちんと助けられて、故郷でちゃんと引きこもろう。
そんな限りなく後ろ向きで前向きな決意を固めて、朧月はゆっくりと立ち上がった。”[P.111]
6巻目。
引っぱる引っぱる……次が気になる。
張梁が報われると良いなぁ。
あそこで土下座する朧月ちゃんが好き。
“すると張梁は、まるで違うことを言いだした。
「この部屋は、おまえが今の張宝と呼ぶ、俺の兄者の部屋だった」
「ここが?……では、あの押し花も?」
「押し花?」
張梁が初めて大きめの反応をした。不意を突かれたように顔を上げ、どこか無防備にこちらを凝視する。
朧月はびっくりして、のけぞりながら言った。
「え、ええ……。あの書棚の本に挟まってました。撫子の花が」
「…………」
何か大事なものだったのかと気を揉みながら答えるが、張梁は黙りこみ、あいづちすら打とうとはしない。ただ、気のせいか、寂しそうな瞳に見えた。”[P.162]
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文庫本
- 感想投稿日 : 2013年3月21日
- 読了日 : 2013年3月21日
- 本棚登録日 : 2013年3月21日
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