長編。田舎町でののどかな暮らしを送る子どもたち、しかし子どもは知らされていない伝承や風習、そして恐ろしい雷の季節によって平穏な暮らしが脅かされていく。
作者の描き出す文化、風俗の巧みさが素晴らしい。子どもの目線に立ってみると実際の現実世界もこのように危うく怪しい世界に見えるのではないか。そんな体験を大人になってから出来ることが楽しい。主人公は成長の過程で子どもと大人、現実と非現実、生と死など対立する(しているように見える)世界のあいまいな境界をさ迷い歩きながら視界を広げていく。作者はそうした境界の向こう側にあるものを描くのが上手く、作品世界において見えないもの、聞こえないものが感じ取れるように思えた。
物語としては割とオーソドックスで、度肝を抜かれるような意外な展開は多くないと感じた。その分、飽きることなく物語が進行し、構成の妙もあって最後まで面白かった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年3月23日
- 読了日 : 2022年3月23日
- 本棚登録日 : 2022年3月23日
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