オーケストラは「カラヤンとの関係を軸に」選ばれたらしいが、本文がカラヤン一色ということはなく、むしろ控えめ。扱いにおいて、他の多勢の指揮者たちとの差は特に感じなかった。
そう、本書には、実に多くの有名指揮者が登場する。著者の方針として音色等の話題には触れないこともあり、さながら指揮者列伝だ。
とはいえ主軸はあくまでオーケストラにあるので、ある時代の首席指揮者として長々触れてきた人物の伝記が途中でぶつりと途切れ、この続きは次に移った別オケの章でね、ということがままあり、いっそ人物基準のほうが読みやすかったのではと思わせる。「さっきの人がここにも!」的昂奮は私にもあったが、悲しいかな基礎知識があまりに乏しく、点と点が線に繋がるあの快感は味わえなかった。せめて充実した人名索引があれば、かなり違ったのではないだろうか。
さりとて本書は、音楽好きに供するものでもない。クラシックマニアだが歴史はあんまり…という向きにも、ぴんとこないのではないかと思われる。
いろいろ書いたが、本書の正しきターゲット層——クラシック音楽をメイン、近現代史をサブの趣味に持つ人——には紛れもなく、こたえられない良書であろう。歴史好きのクラシック初心者としては、もっと知識を深め、本書の本当の面白さがわかるようになった頃、ぜひとも再読したいと感じた。
2011/10/19〜10/21読了
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
芸術・芸能・教養
- 感想投稿日 : 2011年10月22日
- 読了日 : 2011年10月21日
- 本棚登録日 : 2011年10月22日
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