ホテル1222 (創元推理文庫)

  • 東京創元社 (2015年9月30日発売)
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本棚登録 : 134
感想 : 27
3

「200人が巻き込まれた列車脱線事故」「マイナス30度」などといった舞台立てで人目を引きつつ、実際は即死した運転士以外は重傷者もなかったり(スキーストックが腿を貫通した主人公など、結構な重傷だと思うんだけど…いくら医者が大勢乗り合わせていたからって、医療機器もない中で、ちょっと予後が良すぎる気がする)、「遭難者」たちは温かく快適なホテルで豪華な食事に舌鼓を打っていたりで、どうも作者のやりたかったことがよくわからない。苛酷路線とマイルド路線、作品の雰囲気をどちらに寄せたかったのか。
第二の凶器や、以前から化粧をせず、今は車椅子に乗る主人公なればこそ気づかなかった「ある欠落」など、ミステリ的に感心させられた小ネタも多少はあったが、そもそも200人もいてはアリバイ破りどころではなく、本格味は薄め。それよりは主人公やベーリット、マグヌス、カーリらの人物造型や、馴染みのないノルウェーの社会や風俗描写のほうに見どころを感じた。小説としてつまらないわけではけっしてないが、ミステリ、ましてクローズド・サークルものとしての期待を抱いてしまうと、裏切られることになるだろう。

2016/10/22〜10/23読了

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: クローズド・サークルっぽい何か
感想投稿日 : 2016年10月23日
読了日 : 2016年10月23日
本棚登録日 : 2016年10月23日

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