還らざる聖域

著者 :
  • 角川春樹事務所 (2021年6月15日発売)
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感想 : 22
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北朝鮮に内乱が起き軍が二つに割れ反乱軍に占拠される。キム・ジョンウンは対外的には行方不明だが、実際は身柄を押さえられているらしい。親ジョンウン側のヨンギル将軍は朝鮮人民軍を率いて屋久島を占拠。日本政府に対しキム・ジョンウン総書記の解放と亡命を要求、聞き入れられない場合は、島に持ち込んだ核爆弾を爆発させるという。これは単なるテロにとどまらず新たな世界大戦の引き金になりかねない。日本政府が自衛隊を出動できない理由は核爆弾の持ち込みだけではなかった・・・。
屋久島島民らで結成されたレジスタンス、山嶺を駆け巡る山岳救助隊員・高津夕季や山岳ガイド・狩野哲也らが止めようと生き残りを賭ける。登山を趣味の私だが、安穏と屋久島の山に浸っているゆとりはなかった。
読み終えて、エンタメと鼻であしらえずに背筋がぞくっとさせられる。
首相官邸で堀井首相が胸の裡を吐露する件だ。
『それにしても徹頭徹尾、自分たちは蚊帳の外だった。堀井にとって心外ではあるが、一方で仕方がないことだとも思っている。”裸の王様”と揶揄されるほど、見てくればかりの構築に腐心し続けて来た結果、今の日本政府は世界中のどの国からも信用されていない。かつて不沈空母と自国を喧伝しアメリカの軍事力におもねろうとした首相もいたが、その頃からアメリカという大国にとって、日本は田んぼの端に立つカカシのようなものだった。友好友好といいながらも、その実、子供の頭を撫でるように密かに冷笑されていただけのことだ。それをわかっていて堀井もまやかしの親米路線を継承して来たのである』
そのまま鵜呑みにするわけではないが、リアリティがあり過ぎる! 北朝鮮美貌の女兵士ハン・ユリ大佐との邂逅が屋久島の奇跡を呼んだのだろう。それにしてもタイトルの『還らざる聖域』とは? 屋久島はもはや聖域ではなくなったということなのだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2021年8月3日
読了日 : 2021年8月3日
本棚登録日 : 2021年8月3日

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