『最後の恋』
名門医大生の夏目と、身寄りがなく病気を患う弟の面倒を見ているアキが惹かれ合う。
境遇の違いから身を引こうとするアキに、一途に愛を貫く夏目。北川悦吏子さんのドラマの中でも、シリアスかつナイーブなお話。
北川さんの作品に、私がこんなにも心が打たれるのはなぜだろう?
その感情を、私の拙い言葉を集めて、言語化するとしたら?
それは、いつだって彼女が、私の心を見透かしたように、私の思いもしなかった、それでいて一番欲しかった愛のぬくもりや、形を、"はい、どうぞ" と、両手を差し出し、掌を広げるように見せてくれるような気分になる。
時代も、世代も、境遇をも越えて、多くの女性が探しているものを北川さんは作品を通して届けてくれる。
私はそれに出逢う度に、身体が震え、胸に熱い気持ちがこみあげ、あぁ泣きそうだと、実感する。
この作品の、夏目という青年は優しい。
人はみな、人に優しくありたいと思っている。
相手や関係によって、その強さや表現の仕方は違うかもしれないけれど、大切な人であればあるほど、
優しくなりたい
優しくありたい、と。
優しさを、素直に受け取って欲しい、そう思うものだと思う。
夏目は、アキに優しい。
それは人としての部分はもちろんだけど、
それは……
アキのことを、深く、想ってくれているから……。
〝気付いて〟
〝寂しい〟
〝苦しい〟
〝私を見て〟
〝私を心配して〟
〝甘えたい〟
〝傍にいたい〟
〝愛してほしい〟
独りでたくましく生きてきたアキが、夏目と出会うことによって生まれたのは彼女の心の変化だった。
境遇という言葉によって、
夏目と自分を、遠くさせてるのは、アキ自身だったのだ。
最後のシーンが、"伝えたかったこと"
嬉しくて
泣きたくて
苦しくて
夏目が好きで、言葉を探すのをやめたアキ。
伸ばした手は
すぐに...確かめるように触れて
指を絡めて、彼女が引き寄せられた。
言葉以上に、最後のあのキスが、
きっと二人の想いを、未来を、
互いに注ぎ合っているものだということを。
- 感想投稿日 : 2022年7月28日
- 読了日 : 2022年7月27日
- 本棚登録日 : 2022年7月27日
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