東京五輪で日本はどこまで復活するのか (メディアファクトリー新書)

著者 :
  • KADOKAWA/メディアファクトリー (2013年12月27日発売)
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感想 : 5

2020年のオリンピック開催国が東京に決定しました。
1964年に次いで二度目の快挙です。
久しぶりの明るいニュースに湧く日本。
その時に向けての準備は早速始まっています。

前回の東京オリンピックを知らない身ですが、それがきっかけで人々の暮らしは劇的に変化したと聞いています。
次回も、社会インフラ面でのなにか大きなターニングポイントとなることでしょう。

2020年がダメならその次に・・・と考えたいところですが、その次の2024年は、1924年のパリ五輪からちょうど100周年にあたるため、おそらくパリが開催都市に立候補し、おそらく決定されると予想されているとのこと。
そんな裏事情があったんですね。

1964年の東京オリンピックの、競技以外でのエピソードが語られます。
セコムが誕生したのは、このオリンピックがきっかけだったと知りました。
当時、官公庁や会社、工場、テンポなどで夜間の時間帯を護っていたのは、主に宿直で、外注という概念がなかった頃に社員2名で始めた、いわゆるベンチャー企業(当時の会社名は日本警備保障株式会社)が、東京オリンピックでの実績が評価されて会社が巨大化していったそうです。
そして今では、押しも押されぬ一大巨大企業に成長したわけです。

かつての東京オリンピックから新たに導入され、その後世界水準として定着した事柄として、テレビの衛星生中継による全世界配信は知っていましたが、トイレの人型マークや非常口のマークといったピクトグラム(絵文字)もだというのは初耳でした。
英語圏ではなく、英語に自信のない日本だからこその発案だったのでしょう。
 
また、今では当たり前となった順位やタイムの公式記録のコンピュータシステムで一括管理も東京オリンピックが始まりで、開発には日本IBMが加わったとのこと。
それまでは全て手作業だったということで、とても大変で曖昧な公式記録決定だったわけですね。

さらに、思いつかなかったのが選手村の食事。
選手村には帝国ホテル、第一ホテル、ホテルニューグランド、日活ホテルから4人のシェフが集結し、全国のホテルから交代制で300人のコックがやってきて、毎食約1万人分を調理したそうです。
材料費だけで請け負っていたというのですから、ほとんどボランティア。

その時に得たノウハウを活かして、冷凍食品とサプライセンターの活用や、複数の料理人で共同作業し、セントラルキッチン方式で一度に大量の料理をつくることを広げていった結果が、今日のファミリーレストランやファストフードへの調理法へと進化していったとのこと。
誰かの頭にぽっと浮かんだアイデアというわけではなかったんですね。
着々と結果を成果にし、さらに発展させていく。
今日に至るレストラン産業の変化の流れが目に見えるようです。

アスリート1万人分の食材は、一般人2万人分に相当するため、五輪開催の半年前から、食材を少しずつ購入しては冷凍していったそうです。
そのわけは、一度に購入すると、食材はすぐに価格が高騰してしまうため。
経費節減のために食材を少量ずつ長期間にわたって調達することを心がけたそうです。
いろいろと知恵を巡らせて、様々な関係者が世紀の大仕事に取り組んでいったことがわかります。

オリンピックといえば、スポーツマンシップに則った選手たちのハイレベルな競技を見ることができるスポーツの祭典だとばかり思っていましたが、この本に紹介されているような違う視点から見ると、それを様々な形で支えている裏方が、晴れ舞台の環境を万全に整えているからこそだと気付きました。

次回の東京オリンピックのドリーム効果を、森記念財団都市戦略研究所は約3.5兆円と試算したそうです。
想像がつきませんが、景気は社会の雰囲気に大きく左右されるということで、明るく楽しい気分が経済を回していくことが期待されるとのこと。
暗いことばかり多かった昨今、国を上げて明るいムードにひたれるのは、久しぶりでしょう。
そう考えると今から楽しみになってきます。

ところで、熊野筆がハリウッドのメークアップアーティスト御用達になっていることは知っていましたが、南部鉄瓶が、赤やグリーンのポップな色使いになって、鉄製カラーポットとして中国やフランスでヒット商品になっているとのこと。
まったく想像がつかないので、どんなものなのか気になります。
日本では売られていないのでしょうか?
世界の祭典を迎えるにあたり、アート面においても伝統と革新の新しい融合が期待できそうです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2014年1月20日
読了日 : 2014年1月20日
本棚登録日 : 2014年1月20日

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