仏像ミステリー

著者 :
  • 講談社 (2010年7月8日発売)
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感想 : 3

仏教の本家本元はインドや中国というイメージが強いですが、日本にある仏像数は、他を圧倒して世界最多だそうです。
国内に数十万体にも及ぶ仏像が現存していると聞くと、その数に改めて驚きます。
また、質も高く、制作されてから100年を超える歴史を持つ仏像は、日本には多々あれど、世界では稀なのだとか。
普段はあまり意識していませんが、世界一の仏像国なのだと知りました。

古代や中世の仏教伝来期には、大陸から彫像を輸入してくるしかなく、しかもそれが容易ではなかったため、絵画で輸入し、それを日本で立体化するという苦労があったと説明されます。
空海の東寺講堂も絵画を立体化したものだそうです。
今のような仏像知識がほとんどなかった時代にあれほどの作品を造り上げた、当時の仏師の努力と創意工夫が偲ばれます。

著者は図象学研究者。
人々を見守っているかのよう静かにたたずむ仏像に、実は闇の領域(ミステリー)があるとして、裏の隠された政策事情などに焦点を当てた本です。
宗教の根底にある「畏れ」を探っていくというアプローチ法をとっています。
茶吉尼(ダキニ)天の紹介のところでは、ちょうど栃木の殺生石を見てきたばかりだったので、理解が深まりました。

大黒天は大国主命のことだと思っていたら、もともとはインド発でシヴァ神がルーツだとのこと。
最澄が三面大黒を日本に広め、大黒と大国という単なる音の共通で、大国主命と同一されるようになったそうです。
知っているようで知らないこと、間違って覚えていることって多いんだなあと思います。

東横線にある祐天寺は、祐天和尚が建てた寺ですが、彼は断食中に不動明王に口から剣を串刺しにされるというすさまじい神秘体験をしたことが紹介されていました。
つまりそこまで追い詰めた修行を行っていたのでしょう。

中国史上、成功したのは禅宗と浄土教で、どちらも道鏡との関係が深く、インド仏教の論理とは縁が薄いものだそうです。
双方とも、日本にも導入されて広まりました。
日本まで来ると、仏教のインド的な側面はかなり変わってきているものだろうということを、ヒンドゥー教の苛烈さと比べて感じます。

この本のメインとなっている、仏像の闇の領域の紹介とは少し違う面で、いろいろとためになった本でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 宗教全般
感想投稿日 : 2013年5月14日
読了日 : 2013年5月14日
本棚登録日 : 2013年5月14日

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