中国系SF作家ケン・リュウの短編集。
同じ著者の作品を別のSF短編集で読んだことがある気がするが、自分には本書のほうが良かった。
science色強めの話、伝奇色強めの話など味わいは色々だ。だが共通しているのは、異なる文化の重なる、その境界線上にある者の視点。アメリカが舞台の話でも、その舞台における異国人としての自分のルーツが抜きがたく意識されている。
いまアメリカと書いたが、出てくるのは国としてのアメリカというより、一般的なグローバル化、現代化の象徴という方が適切かもしれない。「紙の動物園」や「良い狩りを」は、その狭間で淘汰されていく古い文化への哀惜。「結縄」「ランニング・シューズ」では、必ずしも中国ではないが、やはりグローバル化によって追いやられる弱い立場への視線がある。
「草を結びて環を銜えん」は漢族と満州族との戦争に巻き込まれる女性の話。中国国内の民族同士の争いをテーマとして描こうとすると、やはり近い時代ではなく、時代劇にせざるを得ないのだろうか。
「もののあはれ」は日本人が主人公。日本人である自分の感性と照らして、主人公の行動や考え方が自然に思われる部分もあり、逆に日本人の著者ならこうは描かないだろうと思われる部分もある。カズオ・イシグロの描く日本人像のように。そういったずれを通して、自分の感覚の輪郭を知るのも外国作品の良いところ。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年2月5日
- 読了日 : 2023年1月29日
- 本棚登録日 : 2023年1月30日
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