数年前に読んだ『火を熾す』がすばらしく、ロンドンのほかの本も読みたいなと思いつつ数年。
多くの作品を残したロンドンだが「その作品群のなかで、犬は人間に次いで二番目に重要な動物である」と訳者の柴田さんは言う。そこで、これは「犬の話」にしぼった短・中編。
まず最初の「ブラウン・ウルフ」に泣く。
だが、ところが、次からの数編は決して「ペット」に甘んじない、というか人間にはおもねない誇り高かったり、邪悪だったり、の犬たち。人間の一枚上手をいくどころか、とうてい叶わない賢さを持つ動物たちである。
小さい頃におそらく抄訳で読んだ「野生の呼び声」は、賢い飼い犬のバックがどんどん荒々しくなっていくのがなんだか悲しかったものだ。いま、柴田さんの素晴らしい訳で読むとロングセラーも頷けるすばらしい文学作品であった。
最後の一編はおまけのように犬とは無関係の「火を熾す」も収録されてあり、これが嬉しい。言ってみれば雪の中で火を熾すまで、ただそれだけなのにスリリングな一編。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2018年1月10日
- 読了日 : 2018年1月10日
- 本棚登録日 : 2018年1月10日
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