ヨーロッパ文明の起源: 聖書が伝える古代オリエントの世界 (ちくまプリマー新書)

著者 :
  • 筑摩書房 (2017年11月8日発売)
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感想 : 8
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 神話、聖書、叙事詩、碑文。メソポタミアやエジプトの古代の物語的要素が取り込まれた記録物を基に、ピラミッドやウルのスタンダードなどの考古学的遺物の話も交えつつ、古代オリエント文明の実相を広く描いた一冊。少しまとまりがない気もしたが、メソポタミア文明がシュメール→アッカド→アッシリアと続き、エジプトをも征服したアケメネス朝ペルシアのもと、現在のイランからエジプトまでの領域を支配するオリエントの一大帝国が成立し、それが更にギリシャを支配下に置いたマケドニアのアレクサンドロス大王によって征服される事で、現在の西洋文明における文化的礎となった事が改めて学び直せて良かったです。メソポタミア南部のシュメールの洪水伝説がのちのオリエントの民族の物語にも引き継がれ、ユダヤ教の旧約聖書やオウィディウスの『変身譚』に記された事、ハンムラビ法典が「損害に見合う罰の相場を示しただけの、非常に冷静で客観的な法典」である事など始めて知る事も多く、肩の力を抜いて楽しく読む事ができました。
 個人的にはシュメールについてもう少し詳しく知りたいと思ったので、機会があればまた関連の本を探して読みたいと思いました。あと、ヘロドトスの『歴史』を読みかけているので、それを促す契機となりそうです。ただ通史として知りたい方は、別に山川出版社から出ている教科書的な書籍に一度目を通した方が良いのかな、という気がしました。オリエントの故事を楽しく知りたい方には最適だと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 西洋史
感想投稿日 : 2018年2月12日
読了日 : 2018年2月9日
本棚登録日 : 2018年2月12日

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