単純な脳、複雑な「私」 (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社 (2013年9月5日発売)
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本棚登録 : 2289
感想 : 146
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脳について。学術研究と筆者の考え。
一般啓発としてはかなり(情報処理的に)レベルが高い本である。
ノイズも多いが情報量も多い。
あと筆者自身の解釈にも注意が必要(快楽主義者っぽい)。ファクトを拾って読むのが良いかと。

【以下メモ】
直感の発生場所は大脳基底核(淡蒼球)。
しかし、ここれは訓練されたものしか扱えない(手続き記憶の生成場所)。だから天性の勘はない。
無意識の方が大きい(その点フロイトの分析は正しい)。
報酬系テグメンタ。
ひらめきは寝た方が良い答えが出る。
意識ではなく、無意識での決定の連続で人間は決定を行っている、しかもそれが意識化の決定であると錯覚している点がタチが悪い(だからこそ、意思決定を言語化する事が重要であるという示唆が得られる)。
ノンバーバルコミュニケーションには性差があり、男性は苦手で、女性が得意。基底核の直感の力。

自由意志の存在は?
私たちの意識はどのように作られているのか。
自由否定も自由意志。トートロジーの連続。

行動経済学の知見でも出てくるが、ボランティア活動に報酬を貰うと、満足度が落ちる。
逆に報酬がない方が満足度が高い
→脳は行動を合理化する為に感情を変える。
(お金をもらってないでやっているのだから、とても良いことに違いないという錯覚)
→心は行動に影響を受けている。

脳の電気信号の順序が、
準備→意志(手を動かせ)→手が動いたという感覚→手を動かせと実際に指令する
という順序だというのも示唆深い。
脳の電気信号を捉えれば、次のパッドが失敗するかもわかる。α波によって。
自律神経は自分で動かす事ができる。血圧も。汗も。α波も。これはフィードバックで可能になる。薬がいらない時代が来るかも。
脳も同じ原理で動作を行っている。つまり、手が動いたという感覚→手を動かせと指令
フィードバックがあって初めて脳は活動できる。
つまり、これが身体と心の連続性で、不分離性。

脳のノイズについて
べき乗で表されるこの世の中の事象。正確には、脳の創発の結果。
ジップの法則
都市の人口、ベストセラー作品数、収入、地震の大きさ、ガラスを割った時の破片の大きさ。などなど。
ノイズがエネルギーを作る。脳は20ワット位で動く。
ニューロンの入力がゆらぐ→ノイズ
「鹿威し」モデルでの拡散と収束

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 医学
感想投稿日 : 2015年3月29日
読了日 : 2015年3月29日
本棚登録日 : 2015年3月6日

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